緑谷と飯田のパンチとキックで大ダメージを負ったヒーロー殺しは、ダメ押しの俺の炎で完全に意識を失った。


この場にいる全員がふう、と一息つく。


「じゃあ拘束して通りに出よう何か縛れるもんは…」


おかしい。
みょうじの反応がない。


…まさか。


慌ててみょうじに駆け寄る。
目を瞑ったまま、動かない。


「みょうじ… みょうじ!!」


様子に気付いた緑谷と飯田が近寄って来る。

「みょうじさん…どうしたの!?」
「みょうじくん…!?」


軽くみょうじに触れる。
少し身体が冷たくなってはいるが、息はしている。気を失っているだけのようで少しホッとする。


「大丈夫だ、気を失っている…飯田…悪いが縛れるモン見つけて来てくれるか」
「!…あ、ああ」


恐らく出血過多によるものだ。
みょうじは俺を庇って背中からも血を流している。

くそ!俺が油断さえしなければ…。


飯田がゴミ捨て場から縄を見つけて来て、武器を全て外して拘束する。
飯田は腕がボロボロなのでみょうじを抱き抱えながら何とかヒーロー殺しを引っ張る。



「早くこいつを医者に見せねえと…!」
「悪かった…プロの俺が完全に足手まといだった」
「いえ…一対一でヒーロー殺しの個性だともう仕方ないと思います…強すぎる…」


最初にやられたヒーローに緑谷はおぶられながら大通りまで歩く。
たったこの距離がもどかしい。


「四対一…最後は三対一だがその上にこいつ自身のミスがあってギリギリ勝てた多分焦って緑谷の復活時間頭から抜けてたんじゃねえかな。ラストの飯田のレシプロはともかく緑谷の動きに対応がなかった」


ようやく大通りまで出ると、緑谷の職場体験先のヒーローがやって来て緑谷がこっ酷く怒られていた。
それから色んなヒーローも現着するが、親父の姿が見えない。
聞くと敵に有効でない個性の人らがこっちの応援に来たらしかった。


「二人とも…そして聞こえてないと思うがみょうじくんも…僕のせいで怪我を負わせた本当に済まなかった」


飯田が頭を下げる。
そしてボロボロと涙を流す。
怒りに身を任せてしまう人の感情を、俺はよく知っている。だから責める気にはなれなかった。



「何も…見えなく…なっていた…!」



緑谷も申し訳なさそうに俯く。


「僕もごめんね…君があそこまで思いつめてたのに全然見えてなかったんだ友達なのに…」
「…!」
「しっかりしてくれよ委員長だろ」


俺の言葉に、飯田はぐいと、涙を拭う。


「…うん」


時間にしてみればほんの5〜10分くらいの戦いだった。けれど俺たちにはものすごく長い戦いのように感じ…



「伏せろ!!!」



バサ、と空から翼の生えた能無が飛んできた。
そのまま緑谷を掴み、飛んでいく。


「緑谷くん!!」


やられて逃げて来たのか…!
そう思った時、拘束したはずのヒーロー殺しが、縄から抜け出して走り出した。
途中、顔に脳無の血を浴びたヒーローの血を舐め動きを止める。


「偽物が蔓延るこの社会も徒らに力を振りまく犯罪者も…粛清対象だ」


ズン、と脳無の頭をナイフで貫く。


「全ては正しき社会の為に」


そして、ようやく親父が現着する。


「贋物…正さねば…誰かが血に染まらねば…!"英雄"を取り戻さねば!!来い!!来てみろ贋物ども」


その言葉に、気迫に。


そこにいた俺たちはもちろんプロヒーロー、親父でさえも気圧され動けなくなった。


それほどまでの、殺意と熱意。



「俺を殺していいのは本物の英雄(オールマイト)だけだ」



そう言い放つと、ヒーロー殺しは立ったまま気を失った。

思わず腰が抜け、ストンと尻餅をつく。
抱えていたみょうじだけは何とか離さずに済んだ。



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