「轟くんに、みょうじくんまで…!」
「何で君たちが…!?轟くんはそれに左…!」


驚く飯田くんと緑谷くん。
こんな危険な状況なのに、苦笑する。


「何でって…ねえ、轟くん?」
「こっちの台詞だ、数秒意味を考えたよ。一括送信で位置情報だけ送ってきたから意味なくそういうことする奴じゃねえからなお前は」


パキパキと音がする。
轟くんの氷結が敵に向かっていく。


「ピンチだから応援呼べってことだろ」


と思いきや、氷で滑り台のように緑谷くんや飯田くんを滑らせ後ろに追いやる。


「大丈夫だ、数分もすればプロも現着する」


そして私が動けなくなってる人たちの前にガラスの壁を出し防御壁を作る。

安心とまでは言えないが気休めにはなるだろう。


「こいつらは殺させねえぞヒーロー殺し」
「私が…絶対に守る!!」


絶対…か、とヒーロー殺しがククと笑う。


「轟くんみょうじさん!そいつに血ィ見せちゃダメだ!多分血の経口摂取で相手の自由を奪う!皆やられた!」


何その個性!
血を、摂取!?怖い!!


「それで刃物か、俺やみょうじなら距離を保ったまま…」


ナイフが私と轟くん向かって飛んでくる。
私はとっさにガラスで盾を作り出して防御したが、喋っている途中の轟くんが軽く掠ってしまう。
それを見たヒーロー殺しが轟くんに的を絞って走り出す。


「良い友人を持ったじゃないかインゲニウム」


早い!!
一瞬で轟くんの目の前に立っていた。
刀で轟くんを斬ろうとして、とっさに氷結で塞ぐ。


ヒーロー殺しがちらと上を見る。
ナイフと同時に投げていたらしい刀が、轟くんの方に落ちていく。


私がとっさにナイフを投げて刀の落下地点を変えると、いつの間にやら轟くんはヒーロー殺しに掴まれていて、頬の傷を舐められそうになる。


「轟くん!!」


ぶおっ、と左側でとっさに炎を出して回避する。


「っぶねえ…」


一つ一つの動きが二択三択を迫ってくる。


強い…!!!


ヒーロー殺しが軽いステップで距離を取る。
その僅かな隙にナイフを投げる。
避ける位置を予測して…

「…っ!?これは」

ヒーロー殺しがニヤと笑う。


「さっきあなたが使ったのと同じ手!」


視線を下に誘導し、ナイフを投げたのと同時に刀を作り出し上に投げていた。

一気に間合いまで入って、新たにナイフを作り構える。
振りかぶる…と見せかけて一瞬で後ろに回る。


「!」


振り返ろうとした隙を見逃さずに轟くんの氷結、そして私がナイフで斬りかかる。
ヒーロー殺しがジャンプで回避する。


「やるじゃねぇか、あぶねぇなぁ…」


動きが早過ぎる…!
考えながら動いてると間に合わない!
かと言って無策で挑んで戦える相手じゃない。


「何故…三人とも何故だ…やめてくれよ…兄さんの名を継いだんだ…僕がやらなきゃそいつは僕が…!」


まだ動けない飯田くんの悲痛な声が聞こえる。
ここまで追い詰められている飯田くんに何もしてあげられなかった。
だからこの場だけは、彼を守りたい。


「継いだのかおかしいな…」


ズオ!と音がして大きな氷を出す。
ヒーロー殺しはそれをも避ける。
私は空中にいるのを見逃さずにナイフを投げる。
精度はかなり上がったはずなのに、空中ですらそれを軽々と避けられる。


「俺が見たことあるインゲニウムはそんな顔じゃなかったけどな。お前ん家も色々あるんだな」


目の前の氷壁が、刀によって切り刻まれる。
バラバラと音を立て、崩れる。


「「!」」
「己より素早い相手に対し自ら視界を遮る…愚策だ」
「そりゃどうかな」


轟くんが炎を出す。
私がナイフを数本出して構える。

トトッ!とナイフが4本飛んできて、轟くんの左腕と私の右腕に突き刺さる。


「「っ!?」」


ナイフに気を取られている隙に、ヒーロー殺しは私と轟くんの頭上にいた。
私はとっさにガラス壁を作り出して回避しようとする。


「お前らも…良い…」


何を言ってるんだ、と思った時に緑谷くんが素早くヒーロー殺しを掴み、その反動のままヒーロー殺しは壁に打ち付けられる。


「緑谷!」「緑谷くん!」
「なんか普通に動けるようになった!」
「時間制限か」


近くにいたヒーローが、いや…と否定する。


「あの子が一番後にやられたはず…俺はまだ動けねえ」


何か理由がある…?

そう長考する暇もなく、緑谷くんが脇腹に肘を入れられ投げ飛ばされる。


「下がれ緑谷!… みょうじはまだ動けるか!?」


轟くんの氷結がヒーロー殺しを狙う。


「う、うん!でも私は利き腕をナイフでやられて動かせない!ナイフはもう使えない!」
「…!あまり動かすな、今後使えなくなるぞ」
「わ、わかった!」


緑谷くんがゲホゴホ言いながら私たちの近くまでなんとかやって来る。


「血を摂り入れて動きを奪う。僕だけ先に解けたってことは考えられるのは3パターン。人数が増える程効果が薄くなるか…血の摂取量か…血液型によって差異が生じるか…」
「血液型…俺はBだ…」
「僕はA…」

ヒーローさんがB、飯田くんがA…

「緑谷くんは?!」
「僕はO!」

全員違うのか…!


「血液型…正解だ」


ヒーロー殺しが、ニヤリと笑った。



43 ヒーロー殺しvs雄英生徒
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