飯田くんは目的地に私より早く着いた為、先に降りた。
私ももうしばらく電車に揺られて人気の多い駅で右往左往しながらも慣れない乗り換えをして降りる。


そしてここ…キリサキジャックのヒーロー事務所。


「みょうじなまえですっ!よ、よろしくお願いします!」
「おう、よろしく」


短い黒髪にギラリとした目つき。
どこか爆豪くんを思わせる雰囲気だが彼よりは随分柔らかく、どちらかというと兄貴分という感じだ。


「体育祭見てたぞみょうじ。お前はナイフの使い方がなっちゃいねえ」
「はっ、はい…独学ですので自分でもそう思います」
「独学、なるほどな…ま、知ってると思うが俺の個性はナイフ。身体からナイフを作り出すことが出来るし、身体のどこでもナイフに変化させることだって出来る」


腕をナイフのように鋭くして見せる。
更に空中に数本のナイフを作り出し、壁のダーツの的に投げる。
ひゅんと風を切る音をさせ、全て真ん中に入る。


「おおっ!」


私は思わずパチパチと手を叩く。


「ヒーローの仕事は本来見廻りとかが多いんだけどな、それは明日以降にする。今日はお前のナイフを見てやる。ただし、事件が発生したら警察から応援要請がくる。その場合は悪いがお前にも着いてきてもらって現場を見てもらうからな」
「はいっ!」


ヒーローの仕事に触れられる。
そして今日は私のナイフを見てもらえる!
こんなにワクワクすることはない。







それからナイフの握り方から構え方、立ち振る舞い…

キリサキジャックの教え方は丁寧で分かり易かった。
逆にナイフを持った人間に立ち向かわなくてはいけない時の対処法なんかも教えてくれて、とても勉強になる。


さすがナイフ専門ヒーローだけある。
ナイフ専門と言ってもナイフがなくても戦えるほどの実力を兼ね備えている。これがプロヒーローかと否が応でも思い知る。


「今日はこんなところだな、お疲れさん。明日は基礎トレやら街のパトロールやらするからな」
「おつかれ、さま、でした…!」
「こんなことでへばってんなよ。明日はこき使おうと思ってんだからな」
「は、はい!」



そして職場体験1日目を終える。



41 掴めコツ
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