「ショート」

轟くんが壇上に立って短く発表する。

「名前!?いいの!?」
「ああ」

ショート、かあ。
ヒーロー名で呼ぶ時下の名前で呼んでるようで少し恥ずかしくなりそうだな。なんて思った。

席に戻ってきた轟くんが、決まったのか?と私の机を覗く。

「う、うん…一応」
「そうか」

話が聞こえてたのか、ミッドナイトと目があった。

「みょうじさんできた?」
「は、はい!」

私は慌てて壇上に立つ。


「…えーっと、サンドリヨン、です」


少し照れ臭い。
思わず視線を彷徨わせる。


「シンデレラのフランス語表記ね、個性のガラス、さらにガラスの靴から取ったのね!可愛い!」


ミッドナイトが褒めてくれたのでほっとする。
私は席に戻って息をつく。
そこでプリプリとした百ちゃんが話しかけてきた。


「可愛らしいですわ!私好きですの、シンデレラのお話!」
「私も好きなんだ!昔よく母から寝る前に聞かされたよ」


ちなみに百ちゃんのヒーロー名はクリエティ。スタイリッシュでオシャレな感じがぴったりだ。
その後もヒーロー名がお披露目されるなか、爆豪くんだけは爆殺王だの爆発卿だの提出してダメ出しをくらっていた。







「オイラはMt.レディ!!」
「峰田ちゃんやらしいこと考えてるわね」
「絶対そうだね!」

違うし!という割にはギクって音がしたような。


「みょうじ、もう決めたか」
「私は東京のキッサキヒーロー・キリサキジャック!」
「へえ…ナイフ使い関連でか」
「キリサキジャック!!?」


轟くんとの話を聞いてた緑谷くんがわくわくとした表情で会話に入って来る。


「建物に閉じこもって他のプロヒーローも手をこまねいた凶悪敵集団をたった一人でナイフだけで制圧した超実力派ヒーローじゃないか!!」


何故か一人で感激してしまっている。


「あはは、やっぱ緑谷くんヒーロー詳しいね!そうだよ!体育祭でオールマイトに身体とナイフの使い方を知ればもっと強くなれるって言われて、ここしかないって思って」


なるほど!確かにみょうじさんのメイン武器はナイフ!キリサキジャックの個性は身体からナイフを作り出し戦うというシンプルだけどシンプルだからこそ身体の使い方が…と緑谷くんのブツブツが始まってしまった。
少しそっとしておいた方がいいのか悩む。


…あ、楽しそうだから放っておこう…。


「轟くんは決めた?」
「いや…迷ってる」
「そっか、たっくさん来てたもんね!」
「ああ」


みんな盛り上がってるな。
私もこの職場体験で何か掴めるといいんだけど…。







職場体験、当日。

「コスチューム持ったな、本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」
「はーい!」

さて、と。
私は東京だから東京方面の…


「飯田くん!途中まで一緒だよね」
「…ああ、そうだな」


飯田くん、最近少し様子がおかしい。
体育祭の時飯田くんは早退したらしい。

お兄さん…インゲニウムの事件はニュースで知った。
逃走中の犯人は神出鬼没、過去17名ものヒーローを殺害し23名ものヒーローを再起不能にしたヒーロー殺し"ステイン"。


何だか気になるなあ。


飯田くんの行くマニュアル事務所ってあまり有名ではないし、彼ならきっともっと有名で自分に合った所からオファーが来ていたはずだ。


「飯田くん!」


緑谷くんとお茶子ちゃんがやって来る。

「…本当にどうしようもなくなったら言ってね、友達だろ」

お茶子ちゃんもこくこくと頷く。
私も大きく頷いて飯田くんを見上げる。

「ああ」

まだ少し暗く見える飯田くんの表情に、どこか胸騒ぎを覚えた。



40 名前をつけようの会2
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