『それではこれより!!表彰式に移ります!』

結局、轟くんは炎を使わずに爆豪くんに負けた。
そして爆豪くんは馬鹿にされたと物凄い剣幕でブチギレていた。

私は常闇くんと共に3位の席に立っていて、横で暴れる爆豪くんから少し距離を取っている。

「怖すぎる…」
「もはや悪鬼羅刹」

思わず吹き出す。
悪鬼羅刹って…!

手錠と口枷を付けられて暴れる爆豪くんは、確かにその類いにしか見えない。


『メダル授与よ!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!』


「私がメダルを持って来たあああ!」


『我らがオールマイト!!』


どこからか飛んで現れたオールマイト。
さすがの跳躍力だ。


「みょうじ少女おめでとう!君は個性のコントロールが上手だ!普段武器にしているナイフや身体の使い方をもっと知れば更に強くなれるだろう。あとはとっさの判断力を磨くことかな!?」


オールマイトが私にメダルをかけてくれた。


「はいっもっと頑張ります!」


オールマイトは、ニッと笑って次に常闇くんに声をかけてメダルを渡す。


そしてその次に…轟くん。


「轟少年、おめでとう!決勝で左側を収めてしまったのにはワケがあるのかな」
「緑谷戦でキッカケをもらって…わからなくなってしまいました。あなたが奴を気にかけるのも少しわかった気がします。」


轟くんの表情は、いつの間にか少し晴れやかなものになっていた。


「俺もあなたのようなヒーローになりたかった。ただ…俺だけが吹っ切れてそれで終わりじゃ駄目だと思った。清算しなきゃならないモノがまだある」


オールマイトが、轟くんを抱きしめた。


「顔が以前と全然違う。深くは聞くまいよ。今の君ならきっと清算できる」


横目で少し遠くの彼を盗み見る。
私との戦いでも左側は出してくれなかった。でもそれは彼なりの考えがあったんだろう。

責めるような言い方をして、さらに泣いてるところを見せてしまったことを少し後悔している。
今度話す機会があったら謝ろう。


そうこうしてる間に爆豪くんへの授与も終わり…(本人はこんな1位意味ないとかいらねえとか言ってたが)


「さあ!今回は彼らだった!しかし皆さん!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!ご覧いただいた通りだ!競い!高め合い!さらに先へと登っていくその姿!!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!てな感じで最後に一言!皆さんご唱和下さい!せーの!!」


プルスウルトラーー!


「お疲れ様でした!!!」


オールマイトにブーイング。
プルスウルトラでしょ、そこは…。






次の日…。
体育祭の振替休日。


「見ましたか、体育祭」


私は祖父の経営する… みょうじ総合病院へとやって来ていた。
そこで祖父…院長に会いたいと受付に話すと応接室に通されてしばらく待ったのち、さらに白髪が増えた祖父がやって来た。


「…3位如きで報告なんかしにきおって。こっちは忙しいのだ。"遊び"でヒーローごっこをしてるお前と違ってな」


相変わらずクソほどムカつくジジイだ。

おっと爆豪くんのような口調になってしまった。


「お言葉ですが…遊びではありません。本気です。私も、クラスメイトや他の科の人たちもみんな…」
「話はそれだけか。」


ぎろりと睨まれる。
まあ、こうなることは分かってたけど…。


「はい」
「じゃあもうワシは行く。それから報告なんぞいらん。」


去り際に、顔も見たくないわと吐き捨てられる。


久しぶりに会ったが強烈だ。
しかし生活費等を払ってもらっているし一応ヒーロー科頑張ってますって報告しに来ただけでここまで言われるとは。
1分も会話したかどうか怪しい。


…まあ、仕方ないか。
ため息混じりに応接室を後にする。


「すみません、応接室ありがとうございました」


帰りすがら、一応受付の人に一声かける。


「あ、はい。またねなまえさん。体育祭見てましたよ!頑張ってね」
「はいありがとうございます!」


あのお祖父さん以外の人たちは皆優しいんだけどな。
さて、帰ろうと振り返る。



少し遠くに、見慣れた顔を見つける。

私は驚いてそのまま固まる。

しばらく見つめていると相手も気付いて目を丸くする。


「… みょうじ」
「轟くん…えっと、何か怪我?」
「いや、見舞いだ」
「そう、なんだ…」


轟くんは昨日よりもさらに晴れた顔をしていて、オールマイトに言っていた"清算"が出来たのだと悟った。


「みょうじ、この後暇か?」
「…え?」



37 休め振替休日
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