「勝ったよ!轟くん!」
戻ってくると、珍しく観覧席に居た轟くんに声を掛ける。
「見てた」
「そっか、次私たちだね」
「ああ…」
轟くんは、どこかぼんやりしている。
戦いに集中して欲しいと思ったが、緑谷くんと戦ってから何かあったのかもしれない。
「勝つからね、轟くん」
「負けねえ」
常闇くんと三奈ちゃんの戦いは常闇くんの勝利で終わった。
爆豪くんと切島くんの戦いは少し長引いたが、爆豪くんの勝利で幕を閉じた。
そしていよいよ…私と轟くんの対決。
▽
《スタートォ!!!》
合図と同時に氷結が来る、と思った通り氷結。
私は真っ向から受けることにした。
ガラスで彼の氷と張り合う。
お互いの個性がぶつかり、バリバリと音を立てて崩れる。
《氷vsガラスの透明対決だあ!強度は同じくらいかー!?》
彼がまた右足を踏み出そうとしているのが見えて、ナイフを投げつける。
とっさに避ける轟くんに絶えずナイフを投げ続ける。
「轟くん、私にも"左"使ったらもっと楽になるよ」
パキパキと言う音。
とっさに壁を作り出し回避。
「左、は…」
轟くんの瞳がわずかに揺れた。
迷っている。
その隙をついて距離を詰めてナイフを構える。
氷で塞がれて、邪魔なので今度はハンマーを作り出してぶち壊す。
ハンマーがぼろりと割れた。
もう一度構えて、彼の間合いまで詰める。
おとりと目眩しに私の形をしたガラスを作り出す。
思わず彼が氷結を使う。ふふんそれはおとりなんだな。
そして回り込んで彼の左手を掴んだ。
よしっ!このまま、ガラスで拘束…!
「っ!」
彼の左腕からぶわっと一瞬、火が出て腕を振り払われる。
そしてすぐに火が消える。
「なんで…?」
もう一度走って詰め寄る。
「私には本気で…本気でやってくれないの?!」
ナイフを作り出して…
目の前にまた氷壁。
「うっとおしい、なあ!…っ!?」
足元が凍った。
目の前の壁に意識を向けていたせいで足元が疎かになっていた。
「くっ…!」
慌ててハンマーを作り出して足元の氷を壊そうとするが、それをさせずに全身を凍らせられる。
「左…使ってくれなかったね…」
動けなくなった。
『みょうじさん行動不能!轟くん決勝戦進出!!』
私の氷を溶かしに、轟くんが近付く。
ぽたりと涙がこぼれた。
氷は溶けきって身体は自由になったのに、しばらくそこから動けずにいた。
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35 本気の