「勝ったよ!轟くん!」

戻ってくると、珍しく観覧席に居た轟くんに声を掛ける。

「見てた」
「そっか、次私たちだね」
「ああ…」

轟くんは、どこかぼんやりしている。
戦いに集中して欲しいと思ったが、緑谷くんと戦ってから何かあったのかもしれない。

「勝つからね、轟くん」
「負けねえ」


常闇くんと三奈ちゃんの戦いは常闇くんの勝利で終わった。

爆豪くんと切島くんの戦いは少し長引いたが、爆豪くんの勝利で幕を閉じた。


そしていよいよ…私と轟くんの対決。







《スタートォ!!!》

合図と同時に氷結が来る、と思った通り氷結。
私は真っ向から受けることにした。


ガラスで彼の氷と張り合う。
お互いの個性がぶつかり、バリバリと音を立てて崩れる。


《氷vsガラスの透明対決だあ!強度は同じくらいかー!?》



彼がまた右足を踏み出そうとしているのが見えて、ナイフを投げつける。
とっさに避ける轟くんに絶えずナイフを投げ続ける。


「轟くん、私にも"左"使ったらもっと楽になるよ」


パキパキと言う音。
とっさに壁を作り出し回避。


「左、は…」


轟くんの瞳がわずかに揺れた。
迷っている。

その隙をついて距離を詰めてナイフを構える。
氷で塞がれて、邪魔なので今度はハンマーを作り出してぶち壊す。
ハンマーがぼろりと割れた。


もう一度構えて、彼の間合いまで詰める。
おとりと目眩しに私の形をしたガラスを作り出す。
思わず彼が氷結を使う。ふふんそれはおとりなんだな。

そして回り込んで彼の左手を掴んだ。
よしっ!このまま、ガラスで拘束…!


「っ!」


彼の左腕からぶわっと一瞬、火が出て腕を振り払われる。
そしてすぐに火が消える。


「なんで…?」


もう一度走って詰め寄る。


「私には本気で…本気でやってくれないの?!」


ナイフを作り出して…
目の前にまた氷壁。


「うっとおしい、なあ!…っ!?」


足元が凍った。

目の前の壁に意識を向けていたせいで足元が疎かになっていた。

「くっ…!」

慌ててハンマーを作り出して足元の氷を壊そうとするが、それをさせずに全身を凍らせられる。


「左…使ってくれなかったね…」


動けなくなった。


『みょうじさん行動不能!轟くん決勝戦進出!!』


私の氷を溶かしに、轟くんが近付く。
ぽたりと涙がこぼれた。


氷は溶けきって身体は自由になったのに、しばらくそこから動けずにいた。



35 本気の
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -