「…ちゃん」


「なまえちゃん!大丈夫?」


ハッと視線を上げる。
お茶子ちゃんと梅雨ちゃんが心配そうに私を見てた。


「ご、ごめん!どうしたの?」
「緑谷ちゃんの様子見に行こうってお茶子ちゃんと話してたのよ」
「なまえちゃんもどうかと思って」
「うん、行く!行こう!」

すくっと立ち上がる。

緑谷くん…すごい怪我だったもんな…


飯田くんと峰田くんも加わり、皆でリカバリーガール出張所に向かう。


「「「緑谷(デク)くん!!!」」」


思わず皆ノックもせずドアを開けてしまった。
緑谷くんのベッドの脇に知らない金髪の背の高い人が立っていた。

緑谷くんのご家族が何かかな?とぺこりとお辞儀する。


「みんな…次の試合は…?」


意識はあるようで少しホッとするが、両腕が包帯ぐるぐる巻きで痛々しい。


「ステージ大崩壊の為しばらく補修タイムだそうだ」
「怖かったぜ緑谷ぁあれじゃプロも欲しがんねーよ」
「塩塗り込んでくスタイル感心しないわ」


梅雨ちゃんが長い舌で峰田くんを小突く。


「でもそうじゃんか」
「そんなことないよ!あんなに頑張ってたんだもん」
「ありがと、みょうじさん…」


リカバリーガールがやってきて、ほらほら帰んな!と押される。


「うるさいよホラ!心配するのは良いがこれから手術さね」
「「「シュジュツーーー!?」」」


追い出される寸前に緑谷くんに声を掛ける。


「み、緑谷くんまた後で!」
「お大事にね、デクくん」


手を振って、みんなで目を合わせる。


「しゅ、手術だって…大丈夫かな?」
「大丈夫よ、リカバリーガールですもの」
「とりあえず戻ろう!次は俺たちだぞみょうじくん!」
「そうだね…」







《ステージを直して、行くぜ!またまたお互いA組同士の対決だぁー!!みょうじなまえvs飯田天哉!!》


飯田くん相手…
どこまでやれるか、わからないけどとにかくできることはやろう!!


《スタートォ!!!》


合図と同時に飯田くんが走る。
動き回られると厄介なのでガラスで壁をつくり、ステージを半分にする。


「!」


立ち幅跳びのように飛んでくる飯田くんに、ナイフを投げつけるがかわされる。
空中でかわすのかよそれ!


「レシプロ…バースト!!」


蹴りが飛んできて慌ててしゃがむ。
その隙に彼の下にガラスを作り出すが避けられる。

「わっ!」

がしっ、と首元を掴まれた。


《おっと掴まれたーー!勝負が決まってしまうか!?》


そして場外へ連れて行こうとその速さで走り出す。
でも私はにやりと笑う。


「下、気をつけてね」


ばらばらばら!!とビー玉をばら撒く。
この技は騎馬戦の時に使ったが飯田くんには見せていない。


「なっ!」


飯田くんはビー玉に足を取られよろけそうになる。
その隙に"ある場所"に触れてガラスを詰め込む。


走っていた飯田くんの足がかくんと止まる。


「…!排気筒が詰まって…いつの間に!!」
「今だよ!」


私は掴まれていた左手を掴む。
そしてガラスで彼の身体をがんじがらめに固めて動けなくする。


『飯田くん動ける?』
「…くっ!!」


飯田くんは体格がいいので、思わず首から下全部固めてしまった。
これで動かれたらさすがにもうやばいんだけど…。


『飯田くん行動不能!みょうじさん三回戦進出!!』


ごめんね、と心の中でだけ謝った。
彼に直接言うのは、違うと思ったから。



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