開始と同時に轟くんの氷結が緑谷くんを襲う。
緑谷くんはそれを真っ向から自損覚悟で打ち消す。

そしてまた氷結、打ち消す、氷結、打ち消す…。
遠くからでも緑谷くんの指が腫れ上がっているのが見えて痛々しい。


「ゲッ!始まってんじゃん!」
「お!切島二回戦進出やったな!」
「おめでと、切島くん!すごかったね腕相撲!熱かった!!」
「ありがとな!次おめーとだ爆豪!」
「ぶっ殺す」


ほんとヒーロー志望にあるまじき発言!
怖すぎる!


「とか言っておめーも轟も強烈な範囲攻撃ポンポン出してくるからなー…」
「ポンポンじゃねえよナメんな個性だって身体機能だ。奴にも何らかの限度はあるハズだろ」


確かにそうだ。
私の個性も使い過ぎれば体力は削られる。
いわゆるゲームで言うMPのようなものだ。
私の個性の場合、個性を使う場合HPを若干削ってMPを使うって感じだ。大きな物を作り出せばその分消費も大きい。


「緑谷くんは轟くん相手に耐久戦…でもあの指だと…」
「痛そう、デクくん…」


そして緑谷くんの右手が全滅する。


《轟、緑谷のパワーに怯むことなく近接へ!!》


近付いて氷結。
寸前で緑谷くんがかわす。
緑谷くんの体制が崩れたところですかさず氷結。
とっさに緑谷くんが個性で打ち消し、その近さから吹っ飛ばされそうになる轟くんが自分の後ろに氷を出して場外を免れる。


「あの使い方いいな、私も参考にしよ!」


轟くんの氷結の使い方はいつもすごく参考になるのだ。

…って、あれ…。
轟くん、震えてる…?
よく見ると、轟くんの身体に霜が降りてきているのが分かる。


遠くなので二人の会話はよく聞こえない。
けど、何か話しているようだ。


「全力でかかって来い!!」


緑谷くんの叫び声が、聞こえた。

そしてお互いに向かってまた走り出す。
轟くんは身体の動きが鈍くなっている。
霜が降りてからだ。

そして緑谷くんが、轟くんのお腹に一発入れる。



《モロだぁーーー!!生々しいの入ったぁ!!》



二人はよろよろと立ち戦いを続ける。
緑谷くんはもう手の力が入らないのか、口を使って個性で攻撃。
一方の轟くんは身体の動きも氷の威力も弱まっている。


「期待に応えたいんだ…!笑って応えられるような…カッコイイ人になりたいんた!だから全力でやってんだ!皆!!」


緑谷くんの叫び声が、聞こえる。


いつのまにか会場の中が、その戦いに魅入られて静かになっていた。


「君の境遇も君の決心も…僕なんかに計り知れるもんじゃない…でも…全力も出さないで一番になって完全否定なんてふざけるなって今は思ってる!!」


偶然聞いてしまった彼の境遇は、私と全然違うけど何処か通じるものがあって。
でも緑谷くんの気持ちも分かってしまって。


「だから…僕が勝つ!!君を超えてっ!!」


緑谷くんのパンチがまた、轟くんに入る。


「俺は…親父を……!」



「君の!力がじゃないか!!!」



轟くんの表情が、変わる。
見たことのない、泣きそうな表情に。


そして…


ゴオッ、と炎に包まれた。


「俺だって…ヒーローに…!」


私は息を呑む。

「轟くんが…"左側"を…」
「あ、ああ…」


その瞬間、観客席から雄叫びが聞こえた。


「焦凍ォォオオ!!!」


エンデヴァーだ。
やっと己の力を受け入れたか!とか何とか言っているがこの状況で急に叫び出すものだから私は思わず笑ってしまった。


そして何か話していた二人が、構える。
直感的に、お互い最後の攻撃だと思った。
全力を相手にぶつける、本気の戦い。


「これ以上は…!」


ミッドナイトとセメントスが、動き出す。

しかし二人が早く、お互いが攻撃を仕掛けに飛び掛かる。


お互いの個性がぶつかって閃光のように光り、爆発と爆音の土煙で何も見えなくなる。

凄い風圧で見てるこっちまで吹き飛びそうになる。


「すごい威力…!まだ何も見えない…」


土煙が会場をもうもうと包み込んでいる。


《何今の…お前のクラスなんなの…》
《散々冷やされた空気が瞬間的に熱され膨張したんだ》
《それでこの爆風てどんだけ高熱だよ!ったく何も見えねー。おいコレ勝負はどうなって…》


煙が、晴れて行く。


「!!」



『緑谷くん…場外!轟くん…三回戦進出!!!』



33 轟焦凍:オリジン
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