翌日は臨時休校になった。

雄英に入学してからというもの、休みの日も個性を伸ばすの特訓やら基礎トレーニングばかりやっていたので、たまにはゆっくり休もうと思って家でごろごろする。

午前中はそれで良かったが、午後になって飽きて来て、最近新調してなかった服でも買おうとショッピングモールに足を伸ばした。


よく買っているブランドショップを覗くと、夏物が出ていて、そう言えば夏休みには林間合宿もあることを思い出して数着買うことにした。

会計を済ませ店から出ると、見慣れた紅白の髪の人物と目が合った。


「あ」「お」


思わず声が重なる。
轟くん。…と、隣には、白に赤がまだらに入った髪色の綺麗な女性。


「彼女?」
「…姉さん」


私を首を傾げて聞けば、少し気まずそうに答えてくれた。


「焦凍!なに?彼女!?」
「…クラスメイト」


今度はお姉さんが同じ質問を轟くんにする。
辟易した様子でため息混じりに答えた。


「轟くんのクラスメイトのみょうじなまえです」
「ご丁寧にどうも。焦凍の姉の冬美です」


お互いぺこりとお辞儀をする。


「今日はご姉弟でお買い物ですか?」
「ええ、焦凍ったら去年の夏物着れなくなっちゃっててね。そろそろ衣替えの時期なのにいっつも忙しい忙しいって買い物行かないから今日は無理やり…」

轟くんの両手にはいっぱいの袋。
…女性物のブランドの方が多いような気もするけど…。

「昨日あんなことがあったでしょう?私もう慌てちゃって!今日は仕事休んじゃったのよ」
「そうだったんですか…お姉さんとしては心配でしたよね。でも轟くんすごく強くて、私も助けてもらっちゃったくらいですから!」
「そうなの!?焦凍がねえ…」
「姉さん、いいだろもう」


会話が途切れなさそうな私とお姉さんの間に入る。


「ええ、もう?もう少しなまえちゃんとお話ししたいんだけど…ねえ、焦凍って学校でどんな感じかしら、家では全然話してくれなくて…」
「ほら、他にも買う物あるんだろ。みょうじも用あるかもしれねぇし…」
「ええっと…」

明らかに轟くんが話して欲しくなさそうだ。
本人が嫌がっているので無理に話を続けるのはよくない。
でもお姉さんはお話ししたくてうずうずしているのが見えていじらしい。
弟の学校での様子が気になるなんて、優しい良いお姉さんだ…!


「あの、良かったらまた今度にでも…」
「本当!?」


お姉さんが私の手を取って嬉しそうに笑う。


「は、はい!ぜひ…」
「学校のことたくさん聞かせてね」


轟くんとはあんまり似てないなあ。
何だか可愛らしいお姉さんだ。


「悪かったな、みょうじ」
「ううん、こっちこそ…」


勝手に約束してしまって申し訳ない。


「またね、なまえちゃん」
「は、はい!」


二人に手を降り、私も帰宅する。
私にも兄弟がいたら、あんな風に一緒に買い物に行ったりしたのかなあ。

お姉さんのいる轟くんが少し羨ましく思った。



19 休息!
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