目を開けるとそこは、土砂ゾーンだった。

足場の悪い地面をガラスに変えてとんと着地する。
横を見れば轟くんも綺麗に着地していたので怪我もないようだ。


「…!」


人の気配を感じて、周りを警戒する。
脇からぞろぞろと敵が現れる。


「ガキが二人きたぞ…」


敵が嬉しそうな顔をしたと思った瞬間、ピキピキと音がして温度が下がったのを感じる。
すぐに目の前の敵が轟くんの個性により凍らせられていた。


「散らして殺す…か言っちゃ悪いがあんたらどう見ても個性を持て余した輩以上には見受けられねえよ」


後ろから気配を感じ、すっと避ける。
鉄パイプのような武器が私の真横の風をぶんと切る。


「危ない、なあ!」


そのまま振り向きざまに個性で作り出したハンマーで後ろのアホ敵をぶん殴る。


「大丈夫かみょうじ」
「大丈夫だよー。というか轟くん強すぎ!皆やっちゃうんだもん」


足元に転がってしまった敵に視線を落とす。
気絶しているようだが、轟くんが念のため動かないように凍らせた。
し、死んでないよね…。
とっさに作り出したのがナイフじゃなくて良かったと自分の判断を褒めてあげたい。


「轟くん、ここにいる人たち弱すぎるよ。さっき見たところ本当に危なそうな人たちは4人くらいに見えたけど…」
「ああ、そうだな俺もそう思った」


轟くんがこつこつと凍らせた敵の前まで緩やかに歩いて行き、しゃがむ。


「なあこのままじゃあんたらじわじわと身体が壊死してくわけなんだが」
「…!」
「俺もヒーロー志望。そんな酷え事はなるべく避けたい」


待って轟くん何それ聞いてない怖い!!
自分が凍らされたわけでもないのにひええと情けない声が出てしまう。


「あのオールマイトを殺れるっつう根拠…策って何だ?」


轟くんが、泣きそうになっている敵に聞き出している。
怖っ!轟くん、怖っ!!







「あの顔に手ぇつけた変な人と脳味噌の奴がオールマイト殺しの実行するんだよね!?」
「ああ…そう言ってた」
「確かに他の人たちよりは確かに強そうには見えたけど…オールマイトを殺せるほどなのかな…!」

轟くんと共に出入り口方面へ走る。
あの強そうな敵がいるところへ。
オールマイトは、殺させない!!


「轟くん…あそこ!!」


遠くに、オールマイト。
脳味噌が剥き出しになった気持ち悪いやつと戦っているようだが、体が掴まれて動けないようだ。

あのオールマイトを動けなくするほどの力を想像して、全身ぞわりと鳥肌が立つ。


その遠くからはオールマイトぉ!!と叫びながら走って来る緑谷くんが見えた。


「行くぞみょうじ!!」
「うんっ!」


緑谷くんが黒いモヤに包まれそうになった瞬間、遠くから爆豪くんがやって来てモヤを爆破した。


「どっけ!邪魔だ!デク…!!」


爆豪くんがその勢いのままモヤを押さえ込む。
触れるんだ、それ!
もう一度オールマイトに視線を戻す。


「…脇腹…?」


オールマイトが抑えている脇腹。
敵の手が食い込んでいて痛そうだ。

私は個性でガラスのナイフを二つ、敵の手狙って投げる。
思い通りサクッと敵の手に刺さる。
それと同時にピキピキ、と凍る音。


「てめぇらがオールマイト殺しの実行する役とだけ聞いた」


オールマイトが凍らないギリギリの範囲を上手く調整して脳味噌敵を凍らせている。
オールマイトの脇腹に入ってた敵の手の力が弱まった。


「くっそ!いいとこねー!」
「スカしてんじゃねえぞモヤモブが!!」
「平和の象徴はてめぇら如きに殺れねえよ」
「オールマイト!大丈夫ですか!?」


切島くん、爆豪くん、轟くんそして、私を見て緑谷くんが目を見開く。



「かっちゃん…!皆…!!」



16 思い知れ敵
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