「今日のヒーロー基礎学は…災害水難なんでもござれ人命救助(レスキュー)だ!」

相澤先生がそういうと、教室がわっと歓声。

「大変そう」「ヒーローの本分」とわいわい喋りだす。


「おいまだ途中」


相澤先生がギロっと睨むと一気に周りが静かになるのが面白い。

コスチュームは今回着ても着なくても構わないと説明があった。


「訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗って行く。以上解散だ」


救助訓練…私の個性で何が出来るだろう。
実際、入試の時も瓦礫に挟まれた女の子一人助けることができなかったし。







コスチュームに着替えてバスまで歩く。

「デクくん体操服だ!コスチュームは?」
「戦闘訓練でボロボロになっちゃったから…」

お茶子ちゃんと緑谷くんが会話している後ろから、峰田くんがお茶子ちゃんのおしりを眺めている。

「こら、峰田くん!そういう目で女の子を見ない!」
「麗日のコスチューム最高…」
「それは私も同意なんだけどね…」


峰田くんを注意していて、バスに乗り遅れてしまった。
座れないかと空いてる席を探す。
ちょうど轟くんの隣が空いていた。


「…隣いいかな?」
「ああ」


バスが出発してしばらく経つと、轟くんは少し眠そうでこくりこくりと船を漕ぎだした。
普段見ない光景なので物珍しくてまじまじと見つめてしまう。

睫毛長いなあとか、横顔綺麗だなあとか考えていると、前の方の座席からの会話が聞こえてくる。


「派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪だな!」
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なそ」
「んだとコラ出すわ!!」


どうやって爆豪くんが人気出そうとするのか想像したら面白くて、つい笑ってしまう。


「何笑ってんだガラス女コラ!!!」
「わあごめん!面白くてつい!」
「ついってなんだ!」

その様子を見てた上鳴くんが、爆豪くんを指差す。

「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」
「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」
「爆豪くん、私はそこまで思ってないよ!」
「うるせぇガラス女!!」

フォローしたのにキレられてしまった。
そういえばうるさくなかったかなと隣を見るが、轟くんはまだこくりこくりと船を漕いでいた。


「もう着くぞいい加減にしとけよ…」


うるささに見かねた相澤先生が呆れた声で言う。


「轟くん、もう着くよ」


つんつんと二の腕をつつく。

「ん…ああ、悪い」
「午後一番でバスの揺れって心地いいよね」
「…ああ」

轟くん、可愛いところあるんだなあとくすと笑う。
それを見た轟くんが小首を傾げた。







「すっげーーー!!USJかよ!!?」

広大な敷地に、色んなゾーンがあるらしく入り口から見回しただけでもワクワクしてくる。
本当にテーマパークか何かのようだ。


「水難事故、土砂災害、火事…あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。…その名も"ウソ(U)の災害(S)や事故(J)ルーム"!!」


本当にUSJだった!!!!


スペースヒーロー13号が説明してくれた。
お茶子ちゃんは13号の大ファンらしく、ものすごくテンションが上がっている。


「えー始める前にお小言を一つ二つ…三つ四つ…」


お小言すごい増えてく…。


「皆さんご存知だとは思いますが僕の個性は"ブラックホール"どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」
「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね!」


緑谷くんが嬉しそうに説明する横でお茶子ちゃんがうんうん!と楽しそうに頷く。


「ええ…しかし簡単に人を殺せる力です。皆さんの中にもそういう個性がいるでしょう」


超人社会は個性の使用を資格制にし厳しく規制することで一見成り立っているようには見える。
しかし一歩間違えれば容易に人を殺せる"いきすぎた個性"を個々が持っていることを忘れないように、と13号先生は諭すような口調で言ってくれた。


「この授業では心機一転!人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。助ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな」


13号先生…格好いいな!
こんな風に言える大人に私もなれるだろうか?


「そんじゃあまずは…」


相澤先生が授業を始めようと声を掛ける。
途中で言いかけて、振り向いた。



「一かたまりになって動くな!!」


え…?
突然空中に黒いモヤのようなものが出現した。
その中から人が出て来る。
それは私たち生徒を硬直させるには十分な出来事だった。



14 救助訓練
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -