それから他のみんなの戦闘訓練もつつがなく終わった。


「お疲れさん!!緑谷少年以外は大きな怪我もなし!しかし真摯に取り組んだ!!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」
「相澤先生の後でこんな真っ当な授業…何か拍子抜けというか…」


オールマイトはハハハと笑う。


「真っ当な授業もまた私たちの自由さ!それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば!着替えて教室に、お戻り!!」


ばびゅーんとすごい速度でオールマイト先生は行ってしまった。


皆が校舎に入っていくのを見て、私もついていこうとすると、後ろから呼び止められる。



「みょうじ」



振り向くと、轟くんが釈然としない様子で立っていた。

「さっきの戦闘訓練、お前手ぇ抜いたよな」
「…手なんて抜いてないよ!私は正しい判断だと思ってるよ」

轟くんの瞳に苛立ちが混ざった。


「お前ならもっとやれただろ。葉隠や尾白の凍傷を気にしたか」
「仲間が怪我しちゃったら勝ったって意味が…ていうか、確保テープは透ちゃんしか持ってなかったしどちらにしても私たちのチームは詰んでたんだよ」


轟くんはまだ納得していないようだった。
私は轟くんの瞳の奥を探るように見つめる。

何かを抱えているように見える瞳は、私の姿を苦々しげに見つめている。


「いや、悪い。八つ当たりだな、これは」
「え?」
「お前と戦うの、少し楽しみにしてた」
「そうだったんだ…いつの間に私、そんなに買われてたの?」


轟くんはふと微笑んだ。
あ、と心の中で呟いた。

轟くんのその表情、私少し苦手。
ついドギマギしてしまう。


「おーいみょうじ、轟!ホームルーム始まっちまうぞ!」


切島くんが遠くから声をかけてくれる。


私は轟くんに行こっか、と笑いかけた。
轟くんはああと短く返事して私の隣を歩いてくれた。
何だかそれが意外で、お互いの更衣室に着くまで二人同じ歩幅で歩いた。







ホームルームが終わり、皆で自己紹介も兼ねながら戦闘訓練の反省会をする。
雑談の方が多いくらいだけど。

しばらくすると教室のドアが開いて、治療してもらったらしい緑谷くんが帰ってきた。

それを見た切島くんや三奈ちゃんや砂藤くんが、緑谷くんに詰め寄っている。
さっきの戦闘すごかったもんなあ。三人共少し興奮気味なので緑谷くんはびっくりしてしまっている。


「なあなあみょうじ今度飯行かね?何好き?」


上鳴くんが急に話しかけてくる。
それさっきお茶子ちゃんにも聞いてなかったっけ?


「ショートケーキ…」


甘いのが好き。
ふと、帰ろうとしている轟くんと目が合った。


「あっ…じゃあまた明日ね、皆!」


私も咄嗟に鞄を持って彼の後を追いかける。


「轟くん!待って」
「…?」


轟くんが足を止める。


「さっきの話なんだけど…」
「さっきのって、何だ」
「戦闘訓練の、本気出したとか出してないとか」


轟くんが私に向き直って、その綺麗な瞳で私を見つめる。


「次、戦うときは本気だから!私が勝つから!!」



真っ直ぐに轟くんを見上げた。


きっと、推薦入試は体調が良くても受からなかった。


個性把握テストで百ちゃんを見たとき。
今日の戦闘訓練で轟くんと戦ったとき。



嫌と言うほどその実力差が身に染みた。



でも、ここからだ。
私はここから頑張れば良い。
でも仲間は傷付けない、私なりのやり方で。


「ああ。俺も負けねえ」


私の熱意を受け取った轟くんが頷いた。



11 次は、勝つ!!
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