失恋とは唐突になんとも残酷にやってくるものなのだ。

大した思い出なんか、そういえばなかった。肩書きばかりの恋人であった。体を重ねるでも、唇を重ねるでもない、携帯にわずかに溜まるメールが何にも代えがたいようなそんな薄っぺらい恋。

学校で毎日会えるのに、例えば新八となら馬鹿みたいに笑って話せるのに、貴方とは目が合うだけでほんの一言も話せなかった。

たった一度繋いだ手の感触が薄れていく日々の中で、ただただ私は好きだと思うしかできなかった。

別れは唐突で
残酷で
痛い


「…もう一回頑張らせてはもらえない、アル、カ」
『…多分このまま続けても、変わんねえと…思うんでィ』


ああ、このワガママで横暴なこの人が私の為になんて建前でも言ってくれてる。
嘘かホントか、ねえそのお互いの為なんて優しい理由、何%がホントなの?


「…分かったアル」
『…おう』
「でもっ、」


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
別れたくなんてない。この人のことがこんなに好きなのに、離れて行ってしまうなんて嫌。

「でも、これからも普通に喋ったりしてほしい…アル」
『…そりゃまあ、席も近えしお互い、そうしやしょう』
「…うん、なんか友達のままの方がよかったかも、しれないアル、ナ」
『…ああ』


ああ、ずるいんだ私。
嫌われたくないから物分かりいい女のフリして、関係を終わらせない為に友達なんて新たな関係を持ち出して。
ほんとは、ほんとは。

好きなくせに。


『じゃあ、また…』
「…沖田っ」


ねえ、知らないでしょう。
私がどんなに貴方のこと毎日考えていたか。気持ち悪いくらい貴方でいっぱいだった毎日を、急に失うなんて無理なのよ。会話ができなくてもメールが週1でも、私は貴方の彼女だった。ほんとうにこの人しかいない、なんて思ったの、ほんとうに。


「そのうち勝手にやめるから、迷惑かけないから、だから」


ほんとうに貴方しか居ないのよ、今の私には。


「もう少しだけ好きでいても、いいアルか」


物分かりなんてよくないの。頭も悪いから、物分かりいい女も演じきれないの。友達に戻りたいのに、彼女にも戻りたくて、ずるいの私。


『…俺は、まあ、構わないけど』
「…うん、じゃあまた月曜日」
『おう、じゃあな』


きれた電話に大好きで大好きでたまらない人の名前と、40分の通話料。
たったこれだけで何もかもがガラリと変わってしまった。明日からもう沖田が誰と話そうと何をしようと、告白されようと、彼女ができようと、私は嫉妬すらする権利もなくて。それが、ただただ


「…痛いアル」


きっと月曜日にはまた普通に学校生活が始まって、みんな何事もなく笑って怒って生きていくんだわ。私の悲しみと真逆のところで。

失恋は唐突で痛くて残酷なもので、17歳の私にはちょっと、悲しすぎる。



 



終わりが優しすぎて、まだこの恋を失いきれない



 


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