ここでキスして。(沖田と神楽)




周りの女の子の言う恋とか愛とかは、正直アホくさい。馬鹿みたいに毎日メールして、電話して、好きな人の好きな音楽を聞いてそれで満足するようなもの、恋だと、愛だと思った事を私はない。

「神楽ちゃんて、恋愛とか興味なさそうだよね」

何度言われた事だろうか。私はその言葉に否定も肯定もしたことはなかったけど、その時曖昧な表情をした私に安心した女の子が何人いたんだろう。そんな私をライバルと見なしていなかった女の子達にとって、今私はライバルだ。

「神楽、帰んぞ」
「ん?」
「イヤホン外せばーか」
「返せヨ」
「またこの曲聞いてんのかィ、飽きねえな」
「いいから返すアル!帰るネ」
「俺が言ったんだっつーの」

彼氏、がいる時点で恋愛に興味がないという訳ではないのだ。私だって。

「…暑い」
「…暑いって言うから暑いんでィ、黙って歩け」

ザクザクと砂利を踏む沖田の足音がいつもとちょっと違うのに気付いて、見ればそれは私の知らない新しいスニーカー。履き慣れていないのか幾分歩きづらそうだ。

「お前、その靴履き慣れてないダロ。そんな歩き方してるところぶネ」
「あ?ああ、かもな」
「危ないヨ」
「…ああ」

沖田は目をぱちくりさせてもう一度ああ、と呟いた。そうだろう、今のは私が悪態をつくところだった、私が心配するなんて有り得ない。そんな顔だ。

「…神楽」
「何アルカ」
「ちょっと、寄るとこあんから遠回りすんだけど」
「ん」
「先帰るか?」
「…一緒に行くネ」

そう言えばまた方向転換をして沖田はただ前へ歩いていく。一緒に帰ろうって言ったのは沖田の方なのに結局私は居ても居なくてもどっちでもいいのか、そんなことばかり考える頭に日差しが熱い。

街に出てみればまたいつものように、熱の篭った視線が沖田に注がれる。かっこいい、とか、イケメンとかそんな基準で沖田を判断してほしくなかった。確かにこいつは綺麗な栗色の髪の毛に、白い肌、大きな目、なんていうか、神様は不公平だなと思わせるほどかっこよかった。だけどそこじゃないのだ、沖田という人間はそんなところで判断される人間ではないのだ。ダメな男ではあるけれど、この男がいいと思わせる物がたくさんあるのだ。それを知らないようなそこらの女の子達に、見た目だけで沖田を判断してほしくなかった。

「沖田」
「…あ?」
「そんなにあの子の足、綺麗アルカ」
「なに言って…」
「」



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -