「…ひ、土方さん」

声が震えている。千鶴が喋り出した瞬間笑ってしまうかと思ったがそこはなんとか押さえ込んだ。

「珍しいな、千鶴から電話なんて」
「はい…あの…」

こいつが分かりやすい奴だというのは前から分かっている。ただ言いたい事が言えずにもじもじしているところとか、恥ずかしがっているとこ可愛くてたまらないから。

「ん?なんだ?」

まだ言ってやらない。クリスマスだもんな、なんて。

「土方さん、く、く、クリスマス…」
「あいてるよ、クリスマス」
「…えっ?」
「あいてる」

えっあの、そんな、と電話の向こうで千鶴が焦っている。ああなんでこんなに可愛いんだ。今目の前に居たら、すぐにでも抱きすくめて頬にキスしてやるのに、ああ、千鶴

「あのっ、じゃあ…」
「ああ、どこ行きたい?」
「えっと…土方さんと居られたら、どこでも」
「…ばかか」

柄にもなく照れた自分がいた事が更に自分で恥ずかしかった。昔はクリスマスだとか面倒臭くて、キリストの誕生日なんだからキリストを祝ってりゃいいじゃねえかなんてひねくれて、それで幾度となく元彼女、とやらに怒られたことがあった。土方さんが居ればどこでも、なんて今まで言われていたらきっと嫌気がさしていたのは間違いなかっただろう。千鶴だから嬉しかった、千鶴だから喜ばせてやりたいと思った。とにかく何もかもが違った、千鶴は。

「じゃあ家来るか」
「えっと土方さんの家、ですか」
「嫌か?」
「いえ!そんな滅相もない!」
「外は寒ぃしな、DVDでも借りてきてゆっくりすっか」
「…私ケーキ、作りたいです!」
「おお、じゃあそれは千鶴に任せる」

俺はキリストと知り合いでもなけりゃ、キリストに恩があるのでもない。だけど、クリスマスなんてもののおかげで随分と、可愛い千鶴がたくさん拝めそうだ。

「千鶴、楽しみだな」
「…はい!」

聖夜とはよく言ったものだけれど。


(てかお前、23日とイヴはどうすんだ?)
(あっイヴは沖田先輩にクリスマス会に誘われてまして…)
(は?おま…ダメだ、会うのは24日だ、そのまま泊まってけ)
(え…ええ?)
(せいや、だからな)
(ええ?)



 



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