実習っていうものはちゃんと出ないといけないものだと今更気づいても遅い。ただ単に魔法使えないことが億劫であることを除いて拒む理由はないのだけれども。どうも、乗り気じゃないのだ。ジャックくんとの実習練習を未だに何故か続けているのは観察日誌をつけるためっていう理由だけなのだが、このことがわたしを巻き込む世界が大きく変わることとなった。まさしく、彼は強者であってわたしは少なからず前みたいな貧弱から脱却できたと考えてもおかしくないとおもう。その訳を話せば、戦闘知識が根付いたという勝手ながらの憶測である。少しだけ健康になった。日課になった演習場での練習に向かう最中のことだ。前方を歩く、朱雀色のマントを発見した。そういえば、まだ一人絡んでいなかったっけ。ちょこんと、顔を横から出してみる。「やっほう。」元気にしてる?なんともワザとらしい。

「明日、作戦だね。」
「…だれだ?」
「あ。ごめん。ナギ氏の友人ってことでいいよ。ちなみにジャックくんも。」
「……ああ。最近ジャックがつるんでる、変わり者か。」

声を掛けた人はクラス0ボーイのキングくんだ。彼は堅物っぽくて近寄りにくいってのがあるとおもう。でも、わたしの肝はそんなの関係ねえ!ってなっている。むしろこういうタイプは実はからかいやすいのだ。キングくんはわたしを何処かで見たような発言をする。もちろん、これは最近から目がつくようになったのだとか。「今日はジャックと一緒じゃないのか。」という答えから全て察して頂こう。首を横にふった。

「ほら。ついに明日作戦だから、今日はお互い有意義に使いたいじゃんね。ばっくれたんだ実は。」
「…堂々という事じゃないだろ、それ」
「嘘つくよりはマシだと思って。」
「なら、ばっくれなきゃよかったのに。」

嘘つく必要なくなるだろ、と念をおして言われたら返す言葉がなくなった。こういうときに誤魔化しを使うのがわたしのやり方である。キョロキョロと視線を宙にうかばせて口笛を吹くあたり、屈折してるな。「…本当に変わっているな。」若干呆れられているのか、怪訝な顔が更に増したキングくん。わたしみたいな人種が多分苦手なんだろうか。距離をとってるよね。みればわかりますぞ、と。

「明日以降生きられるかわかんないから、今日は好きなことやるんだ。」
「いかにも死にそうって言葉だな。」
「うん。死にそうだもん。」
「…そう、か。」

いくらジャックくんと実習やってるからって短期間で成長するわけないじゃない。キングくんは哀れんだ目でわたしをみた。本気にわたしを可哀想なやつだと思っているんだろう。クイーンちゃんとも話したがそんなにわたしは脆くみえるのかな。「…健闘を祈ってる。」真面目に返されても。やだな、辛気臭い!あまりの暗い空気だったもんで、ぶち壊してやった。バシッとキングくんの腕を叩き笑い飛ばしてやったわたしの図太い神経を褒めてもらいたいくらいだ。

「クラス0っていつも危険な目にあってるのにすごいなって今となってはおもうよ。」
「かなり話しが飛躍したな。」
「これでも敬意を示してるよ」
「…ああ、そうか。一応、礼はいう。」
「こんな怖いことやらされてんのって酷いよね。」
「誰かがやらなきゃいけないことだろ。」
「それね。」

だからすごいんだって。腐っても候補生だからね。朱雀も何を考えているのかわからないな。そんなことをボヤくがキングくんはそれを全否定する言い方をした。「力があるものに、候補生もなにもないだろ。」と。なんともカッコ良い言葉を吐いた。わたしはそれにちょっとばかし感動した。

「ワオ。なんか、心に響いた。」
「…なにがだ?」
「子どものままじゃいれないってことだよね、それ。」
「捉え方間違ってると思うが。」

そして当たり前のことを言ってる。そうキングくんは言うが、わたしにとってはそれは当たり前じゃないんだよ。わたしちょうヘタレだしね。無理無理。それこそ全否定したい。

「俺たちが、やらなきゃだれもやらない。なら、やるしかないってことだよ。」
「わーなんか、明日頑張れそうな気がしてきた。」
「…そうか、ならよかったが。」

油断は禁物だぞ。余裕ぶっこいてるときに足元踏み外すんだから。いや、結構勇気づけられたよ。明日の結果がどうなったにしろ、やる気だけはあったことを墓まで持って行こう。キングくん、さすがだ。



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