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牢屋へ向かう間乗堂寮長に聞かれるまで、すっかり健助と手を繋いでいることを忘れていた。馴染んでしまっている。こうして歩いていると、引率の先生に連れられて散歩した幼稚園を思い出すな。

「おーい、堰!」

1人和んでいると遠くから聞き知った声。振り向くと、並木道の方から数人のグループがこちらに向かっていた。声の主、桐嶋は捕まってしまったのか。寮長たちが「来たな」と呟いた。

「堰!お前無事だったのか!」

「なんとか」

助けに来てもらってからさほど時間は経っていないのに、なんだか桐嶋の顔が懐かしいように思えてくる。桐嶋はずっと無事だったんだろうか。走り回っていただろうことは推測できるのに、全く疲れた様子がないのはさすがだ。
と、桐嶋の後ろからもう1人よく知った人物が顔を出して、その穏やかな笑顔にほっとした。

「ゆーやくん!おかえりなさい!元気そうで良かったです」

「葉桜も」

おかえりなさい、に桐嶋が一瞬不思議そうな顔をしたけど、突っ込んではこなかった。聞かれないのなら単にはぐれたとでも思っていてもらえるとありがたい。

「揃ったな。突入するぞ」

俺たちの再会の挨拶を待った乗堂寮長の号令に、桐嶋たちは捕まったのではないと理解した。さっきのやり取りからするに、味方の増援を要請していたみたい。三坂寮長が腕時計を確認して「あまり時間がないよ」と急かした。前後左右を先輩たちに守られ、改めて小走りで牢屋へ向かう。
途中葉桜が、一緒に来たのが他の残っていた1年数人と、柊と梅の寮長だと教えてくれた。全寮長が揃ったということだ。さっき以上に視線がすごいと思ったらそういうことか。





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