ほっとして息を吐くと、少し力が抜けた。
「……侑哉、大丈夫?」
もしかしたらただ困っている人を助けに来ただけなんじゃないかと思ったけれど、名前を呼ばれ、ちゃんと俺であることを分かっていての行動と教えられてしまう。
「呼んだでしょ、俺を」
「え?」
目が合った時、無意識で口が動いていたらしい。顔を上げると、Tシャツ姿の蕗口はほっとしたような表情をして、少しするとさっきの俺みたいに視線を逸らした。
「……立てる?」
差し出された手を自然に取って立ち上がると、膝から蕗口のシャツが滑り落ちる。
「あっ、ごめん」
「気にしないで、侑哉の生足見られるの嫌でかけたの俺だから」
冗談混じりにそう言って、拾ったシャツを何度か振って砂を落とした後で、蕗口はそれを羽織らずまた俺の肩にかけた。
「汚れちゃって悪いけど着てて。その制服目立つから」
確かに。でもこれはこれで目立つ気がする。相手が蕗口だし。そう思ったものの、素直に借りておくことにする。ただ、肩ではなく頭から被った。
「ありがとう」
「……こんな形で実現するなんて複雑すぎ」
「なんの話?」
「なんでもないよ」
その後どうしたいか聞かれたから、保健室に行きたいと素直に答えたらついてきてくれることになって、道中他の人が側を通るたびに蕗口の背中に隠れていたらなぜか喜ばれた。