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これはもう勝ちでは?と呟く先輩。

「喋りませんし所属も明かしませんので、ゲスト枠にしてくださいね」

念を押したらとても残念そうにした後、力強く承り!と独特の返事をもらった。
化粧はする参加者もいるけど、時間もないようだし俺はしない方向だ。そのまま出ようとしたら、先輩がリップを1つ差し出したので受け取る。色付きらしい。

「素材を活かしてこう」

返事に困ったのでとりあえず大人しく塗っておいた。すると小さい子がプールの時使うような、フード付きの巻くタオルを被せられていよいよステージに向かう。
先輩がステージ横から司会の人に声をかけて戻ってくると、もう一度俺に頭を下げた。

「本当にありがとう!ステージに上がって適当にワンアクションしてくれれば良いから!」

適当にワンアクションって何をすれば……また聞き返す間もなく軽く背を押される。

「おーっとここでシークレットゲストの登場です!正体不明の女装美男子を拍手でお迎えください!」

まばらな拍手の中出て行きタオルを取ると、瞬間しんと静まり返る会場。勝ちどころか白けている。反応が怖くて客席の方は見れず、どうしたら良いのか分からないので司会の人を見るけれど、目が合ってるのに口を開けたまま無反応で進行してくれない。放送事故のような状態に困って先輩の方を振り返ると、客席に向かってポーズして、と指示をくれたので、客席の遠くをぼんやり見るように向いてお辞儀をした後軽く手を振った。





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bkm







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