35
「いやー、今日一楽しかった!堰くんも俺選んでくれて良いよ!」

「機会があればよろしくお願いします」

「それ断る前提じゃん!そっか、根津くんでも良いよ!」

「機会があれば」

「同じかよ!」

2年生がみんな借り終えたので、にこにこの野中先輩と別れて一度待機列に戻った。なんだかずっと出場していた気分だけど、今からがやっと本番だ。お題が何か、楽しみでもあり怖くもある。

「1年生のみなさんはスタート位置についてください」

コースのセットが終わり、いよいよレーンに入る。隣で健助が念入りに足首を回している。さっきはなにか気になる様子だったけれど、やる気は十分みたい。蕗口はいつも通り微笑んでいる。どことなく楽しそう。葉桜は気合いが入っているように見えるし、西岡もいつも通りで、前川はちょっと嫌そう。西岡の付き合いかな。

「位置について、よーい……どん!」

号砲で一斉にバッドで回り始めるけれど、よくよく考えると走り出さずその場でぐるぐるしているのって、中々シュールな絵面だ。8度回ったところで早くも健助が走り出したのが視界の端に見えた。早い。しかも多分真っ直ぐ走っている。すごい。遅れて走り出すと、同じタイミングで葉桜も一歩踏み出した。と思ったら彼はすぐ転けて視界から消えてしまった。大丈夫かな。
三半規管は強い方なので、健助ほどではないけれどほぼ真っ直ぐ走り抜けて、網に辿り着く。眼鏡を持っていかれないようにここはゆっくり行くと決めていて、その間に蕗口と前川に抜かれてしまった。






prev next

bkm







.
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -