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「……君はもう少し色々怒ってもいいんだよ。もちろん僕にも」

「ちゃんと怒りますよ。でも先生には怒る理由がありません」

「またそんなことを」

なんて言いながらも先生は頬を触り続けている。強く引っ張られたり無理な方向に持っていこうとしたりされているわけではなく、小動物に触れるような感じなので変顔を受け入れてしまえば本当に怒るようなことは何もない。初対面のやり取りから、先生のことを信頼している。

「なら僕が君の代わりに怒りましょう。この件に関しては全て君の良いように動く。この件だけではなく、志常でのことなら必ず力になると約束する。だから、遠慮しないで頼って。自称叔父さんからのお願いです」

「はい」

ありがたいと頷いた後に、じわじわと口元がにやけていってしまう。そんな自称初めて聞いた。

「自称叔父さん……」

「自称ではなく事実上叔父さんになりたいものです」

「あはは」

堪えきれず声に出して笑ったところで、保健室の扉が開く音がした。躊躇うことなく真っ直ぐ足音がこっちに近づいてくるから、健助かな。

「侑哉」

「うん。入って大丈夫」

予想通りの声にそう応えるけど、カーテンを開けた健助の口元がすぐにむっとしたのが分かった。たぶん、先生の手がまだ俺の頬で遊んでいるからだ。先生は気づいていないのか振りなのか、俺の顔をひょっとこみたいにしながら「やあお帰り」と健助に声をかけた。






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