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嫌だって言った?こんなにはっきり拒否されたのは初めてで、またびっくりしてどうしたら良いのか分からなくなってしまう。

「俺のことは良い。ここから離れないでくれ」

開いた唇の隙間から見える口内が赤く染まっている。ーーこんなことなら最初から側に居ればよかった。保健室で言われた言葉を思い出した。ああ、後悔をさせてしまった。

「心配かけてごめん」

「謝るな。侑哉はなにも悪くない」

いくら家族みたいだといっても本当の家族ではないのだから自分を傷つけてまで俺のことを守ろうとしなくて良い。それを伝えたら健助が余計に悲しむような気がして、なにも言えなかった。

「どうしたい」

健助が静かに聞く。声が震えている気がする。どうしたい。仕返しをしたいかと聞いているのか。
備えるし構えるけれど、なにも起こらないならわざわざこちらが手を出す必要はない。そんなことはしたくないししてほしくない。

「俺はただ、平和に過ごしたいだけ」

健助がわずかに口を開く。何かを言ったのだろうけど、音にならず動きも小さくて上手く読み取れなかった。またすぐに唇を噛みしめるから止めようとしたけれど、その端に置いたままの手も、伸ばした反対側の手も掴まれて、引き寄せられた。
そのままノーガードで彼の胸板にぶつかる。眼鏡がずれる。頭と背中に手が回って、離れがたいように強く抱き込まれた。






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