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「勉強しよう」

隣の席、桐嶋の方へ向いてそう提案したのは日常生活にも慣れた5月の始め頃、ゴールデンウィークが過ぎた気のゆるむ水曜日の休み時間だった。

「べん……きょう……」

数秒置いて、某宇宙を背負った猫のような顔で桐嶋が反復する。そう、今月半ばには中間テストがある。忘れてたのかな。

「蕗口と中間テストの勉強会しようって話してて。キャンプのメンバーでやりたいなって」

「楽しそう。えーでも勉強かーうーん」

勉強しても点は取れない、とキャンプの前に言い放った彼は、そもそも勉強が苦手らしかった。クイズラリーの時もクイズ自体にはノーリアクションだったのを思い出す。あの時は適材適所、とは言っても学校の評価にそれはあまり加味されない。例えば運動系の部活でインターハイ出場とかなら免除されるかもしれないけれど……いや桐嶋の運動神経ならそれもありうる。

「そう言えば桐嶋は部活入ってたっけ」

「おう!陸上部!」

「そっか、足速いもんな」

納得して頷くと嬉しそうに「まあね!」と返してくれた後、急に無になる桐嶋。顔から感情が消えてくのってこんな不安になるものなのか、と内心びっくりした。

「そういやテスト期間と前は勉強しろって言われてたわ……勉強会参加する……」

苦渋の決断って感じだなあ。









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bkm







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