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やってしまった、と自己嫌悪の中で頭を抱えてしばらくそのまま途方に暮れた。眼帯でいっそ普段より視界が悪かったのが災いした。桐嶋だったから良かったとも思えない、むしろ警戒しなければいけないかもしれない。でないとたぶん、俺が気を抜きすぎる。
けれど裸でそうしていたって仕方がないので、雑にシャワーを終えて、そのまま着替えまで済ませてからシャワールームを出た。
すると今度はそこに健助が居た。
桐嶋と違うのは、洗面台に向かっていたため後ろ姿だということ。ちょうど歯を磨こうと歯ブラシに歯磨き粉を出しているところで、俺が人が居ることに驚いて「わっ」と声を上げてしまったのでその状態のまま振り返ってくれる。思わず頭に被ったタオルを触って確かめた。

「どうした?」

「ごめん、ちょっと驚いただけ」

「そうか、悪かったな」

シャワールームに俺が居ることは分かっていたんだと思う。洗面台の鏡に、出てきた姿が映っていただろうし。驚いた様子はないものの歯磨き粉がはみ出して垂れかかった歯ブラシを口にくわえて、健助は俺の頭のタオルをわしわしと動かして乾かしだした。反動で少しうつむく。

「いや、勝手に驚いただけだから……歯ブラシくわえたまま危ないよ」

「ん」

されるがままで注意すると、彼は片手で乾かしながらも反対の手で歯を磨き始めた。器用だな。

「そうだ、今から事務所行ってくる」

「……昼間の奴か」

「うん」

健助の手がぴたりと止まる。

「俺も行く」

「えっ」

そう来ると思わなかった。





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