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「……うん、ごめん。思いのほか恥ずい」

意外な反応だ。蕗口は表情を隠すように口元に手の甲を押し付けて、さっとトンネルの出口へ向かった。

「あと後ろの殺気がやばいから」

後ろの殺気。付け足された言葉に振り返る。そこに居るのはもちろん健助だけれど、特に変わった様子もなくこちらを見上げている、と思う。いつも俺が目線を上げる方だから見下ろすのは新鮮だ。

「……ん」

「ん?」

フードが下を向いた。……撫でろってことかな?よく分からないところで張り合うなあ。俺に対してお兄ちゃんのように振る舞うけど、たまにこうしてかわいい。

「よしよし」

2、3度撫でるとフードが上向き、ほんの少し口角も上がったので手を引いた。

「満足した?じゃあ行こっか」

後ろのグループが近づいているし、桐嶋たちにも追いつかないと。それに中腰は長く続けてると中々負担がある。
と、前に向き直りかけたところで健助の手が伸びてきた。お返ししようとしたらしく、頭に届かなかった指先は頬を撫でる。小指が首に当たってくすぐったくて、思わず肩が上がってしまった。

「ふふ、ありがとう。俺も頑張る」

「……ああ」

ネットのトンネルを抜けた先には丸太の吊り橋が見える。背中を向けている蕗口は進む気配がないから待ってくれているのかな。








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