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はーい、と元気よく返事をして桐嶋がコースへと向かい、他のメンバーもならう。挑戦する普通コースは、金剛先生が立つ易しいコースの前を横切らなければ行けない。

「堰」

俺も続こうと会釈で通り過ぎようとしたところで、先生に呼び止められた。

「はい」

「問題は無いか?」

向き直ると穏やかな表情で問いかけられる。今のところ先生が心配するようなことは起こっていないので、特に考えることなく返事ができる。いや、今のところと言わず最後まで何も起こらないとは思うけれど。

「大丈夫です」

「そうか。……楽しめよ」

「楽しいですよ」

他のグループが近づいてくるのが見える。先生は何か言おうとしたのか一瞬口を開いてすぐ閉じ、頷いて、行ってこい、と軽く俺の背を押した。健助と蕗口がスタート地点で待ってくれている。行ってきますを返して2人の元へ急いだ。

「何話してたの?」

「楽しんでるか?って」

蕗口の問いに当たり障りのない返事をした。ニュアンスは違うけどまあ嘘ではないし。

「なんて返した?」

「楽しいですよ、って」

ふーん、と蕗口。楽しいんだ?と聞かれた気がして、先生にされたように彼の背を押した。

「ほら、行こう」

「はいはい、行きますよー」

そのままスタートしてしまったので振り返って健助を確認する。ちゃんと着いてきてくれている。少し距離が近い気もするけど。








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