ドミノ倒シ




イライラ、イライラ。

毎日毎日俺にイライラされている相手は正直嫌い、というか何て言うか。

あー…めんどいから言っちゃうけど、単刀直入に言うと俺は霧野先輩にイライラしている。

とりあえずお願いだから俺の前でそんな嬉しそうにニコニコ話さないで欲しい。
気持ち悪いし、ヘドが出る。

なんでキャプテンの話をわざわざ俺に言って来るんだろ。
むかつく。
しかも俺に対して見せたことがないほどの笑顔で。

何度心が荒れそうになったことやら。
まあもう荒れてるようなもんだけど。



俺は霧野先輩にいろいろちょっかいを出していじめて来た。
俺にあーだこーだ言って突っ掛かって来るってのもあるけど。

一番の理由は霧野先輩が女みたいに綺麗だったから。
そういう人ほど俺はずたずたに壊してやりたい。
だって見た目に関しては何にも苦労していないんだし、無駄に高いプライドへし折りたいって思う。

それが霧野先輩。
よくテレビ番組とかで見るドミノみたいに、いや、もっと残酷な方法で倒れちゃえばいいんだ。


なのに霧野先輩はそんな俺の思いなんかも知らないで、何でもないように

「狩屋。」

俺の名前を呼ぶ。

霧野先輩の声が後ろから聞こえる。


自分の名前は俺を見放した馬鹿な親から貰った唯一のつながりっていうの?わかんないけど。

イライラする。
気安く俺の名前を呼ばないで欲しいな。

「なんですかぁ先輩。」


ほら、俺が年下のクセにこんな生意気な態度取ってるんだ。

何とか言えよ。


でも先輩は

「お前。なんか最初よりも演技下手になって来たな。今俺のこと考えてただろ。」

「…何で俺が先輩のこと考えないといけないんですか。」

「ははは、冗談だって。」

ニカッと笑って頭にポンと手を乗せる。

俺がどんなにいじめたって、どんなに生意気な態度取ったって。

結局のところ、霧野蘭丸という男は誰にでも優しいのだ。
仮にこんなに嫌われていい筈の最低な俺に精神的に傷つくようなことされたって、先輩にとってはどうということではない。

そんなに優しくされてしまうと、俺はすごく恥ずかしく感じる。

馬鹿なことばっかりやって、恥ずかしくないと言う方がおかしい。




先輩、その目閉じてよ。

さすがの先輩でも見えるでしょう。

ちょっと想像してみてよ。
俺が霧野先輩の大大大好きな神童キャプテンをあらゆる方法で汚す、とか。
それは、八つ当たりよりも俺の心のうちなんだよ。


親しくなることや自分を綺麗に磨きあげるのには時間がかかったでしょう?

それを壊すのなんて、ほんの一瞬。

全部ぶち壊してあげますよ、先輩。



「神童!!」

「神童、そこはこうすると…」

「神童っ!!!」

まただ。

その名前を呼ぶ先輩。
それに答えて、神童キャプテンも笑う。

所詮俺がいくら傷つけたり嫌がらせしたって結局霧野先輩と神童キャプテンの関係はどんな必殺技使っても壊せない。

愛想笑いすら出て来ない。
俺の思いが、心が。音を立てて崩れていく。
ドミノ倒しのように。


それでも俺は先輩の嫌がることなんでもする。


「おい、狩屋!!!」

「先輩が悪いんですよ、性別詐欺の霧野先輩?」

「お前なぁ…!!!」


綺麗でいつもうまくいっているモノは壊したくなる。


何故かって、俺は霧野先輩が好きだから。



この世界のメロディー!!に提出しました!!








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