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「うーん…一体何を話してるんだろ…。」
「ほら、なんにもないじゃんか。やっぱり天馬の思い違いだってば。」
「ところでここのお店のコーヒー美味しいね。」
俺達3人は今の今まであの二人を尾行した。
やたらスキンシップが多かったり、手を繋いで行動したり…といろいろ怪しい動きが多かった。
「僕もあの二人は普通にショッピングしているようにしか見えないな。」
「でもさ…あ、ほらほら!!」
俺が指指したのは、顔を真っ赤にして話す名前。
すかさず信助が見て、勝手に二人の物真似をしながら解釈をし始める。
「『名前ちゃんってそっちだったんでしょ!?』
『いや、そうじゃないんだけど…葵ちゃんだったからオッケーなんだよ。』
『名前ちゃんって優しいのね。』…みたいな?」
「アハハ、信助くん似てないよー。」
「そんな真面目に言わなくても…!!」
フェイ、さすがに俺も思ったけど言わなかったよ…。
「ん、あれ?」
「え、フェイどうした?」
チラッと見ようとしたら、フェイに伏せて!!と言われて頭を掴まれて強制的に伏せられた。
ゴンッと鈍い音したけど多分信助の頭がテーブルにぶつけたんだと思う。
フェイも伏せて、誰かに見られないように隠れた。
「な、何、フェイ!?」
「今、名前ちゃんがこっち見てたんだ。もしかするとバレたかも…!!」
「えっ!!」
驚いて二人をそうっと見ると、たしかに名前がこっちを見ている。
葵は気づいてないようだけど、このままではいつかは気づいてしまう。
「ヤバいよ、名前気づいてるよ!!」
「っていうか、気づかれちゃダメなの?」
「ソレ尾行の意味ないじゃん!!」
といろいろ言っていると、ありがとうございましたーという店員の声が聞こえた。
まさか、と思って見たら、葵っぽい後ろ姿が見えた。
「あ!!二人とも会計済まして出て行っちゃった!!追わなくちゃ!!」
「ちょっと会計誰やるの!?ねぇ天馬ー!!!」
信助…!!これも二人のためだ、許してくれ!!
俺はフェイを連れて店を出た。
辺りを探して二人の姿を見つけようとしたけど、どこ探しても見つからない。
ドアの開く音が聞こえ、信助が出たと思って振り返った。
「何やってんだお前らあああああっ!!!!」
「うわっ!?」
そこにいたのは、信助を抱えた名前。
葵もこっそり名前の後ろにいて、俺達に笑ってピースした。
騙された…。
「尾行とはいい度胸じゃんか、天馬。」
「す、すみませんでした!!!」
「まあまあ、名前ちゃんも怒らないで。」
葵は落ち着いて、と名前をなだめる。
それを受けて名前も笑いながらため息を吐いた。
「天馬は葵ちゃんが心配で尾行してた。そうでしょ?」
「!!そ、そうだけど…!!」
「えっそうなの!?」
な、なんで知ってんだ名前!?
まさかすべてお見通しだったり…!!
「だって天馬のことだし、どうせ私と葵ちゃんのデートを恋人同士のデートだと思ったんじゃない?そういうところ鈍感だし。」
「恋人同士以外でもデートってあるの!?」
「友達同士でもデートって言わない?」
と、友達同士…!!
俺達の苦労って一体…。
フェイと信助にドンマイ、と言われて羞恥と落ち込みを抱えながらもおとなしく帰ることにした。
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