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ご飯も食べ終えてそろそろ就寝する所で新たな問題が。

「私はどこで寝れば良いですか……?」

この家は部屋が1つでベッドはなく、あるのは椅子2つとソファのみ。横になるならソファか床で眠るしかなさそうだけど。

「あー俺は椅子に座って机に突っ伏して寝るわ。リヴァイは?」
「……お前がソファを使えばいい」

私を見てそう言ってきたリヴァイさんだけど、彼がどうやって眠るつもりなのかはわからないまま。急に文無しで上がり込んで1番良い寝床を私が奪ってしまうのはさすがに……と思ったけれど、只でさえ生活環境がガラッと変わってしまったんだ。体を痛めたり体調を崩してしまう方が返って迷惑をかけてしまう。だから……

「ありがとうございます。リヴァイさん、ファーランさん」

「ッ?!」
「……………………」
「あれ?2人共どうかしましたか?」

ファーランさんは少しの反応を示した後、視線を外して前髪をかきあげる。リヴァイさんはほとんど表情の変化も反応もなくてよくわからない。

「あっ。あー、まぁ、気にすんな」

居心地が悪いのか何なのか。落ち着きがないファーランさんに、もう一つの疑問をぶつける。

「……明日は何時頃起きれば良いんでしょうか」
「あー。いや、正直俺達仕事の依頼とかもあって結構不規則な生活しててな。寝たい時に寝るって感じだから特に決まってないんだ」
「そうですか。掃除は出来れば起床後すぐにやるのが良いので……」
「……あ?」

事の成り行きを見守っていたリヴァイさんがすかさず反応する。掃除の事となるとこれだ、なんて昔からの知り合いだったかのような私の感想が少しおかしくて笑みが溢れる。

「ふふ……」
「なんだ突然笑いやがって。きもちわりぃ」
「酷いです…………」

きもちわりぃは言い過ぎでは?いや確かに急に笑われても気分悪かったかもしれないけど。私も急に笑われたら相手にもよるけど嫌かもしれない。ましてや知り合って少しだし……あれ?私が悪い?ま、まぁ今はとにかく掃除の話をしないと!

「空気中には見えない埃が舞ってるんだそうです。だからその埃が就寝中に床に落ちてきて。人が活動してしまったらまた埃が舞ってしまうので、起床後他の活動を始める前に済ませるのが良いみたいですよ」
「ほぉ……」
「それと同じ理由で、窓を開けるのも掃除が終わってからした方が良いそうです」
「えっ?そうなのか?いつも始める前に窓開けてたぜ。なぁリヴァイ?」
「なるほどな。さっきお前の掃除を見たときは詰めが甘いと思っていたが、そう言う知識はあるのか。良いことを聞いた」

これは喜んでくれているのだろうか?いやでも詰めが甘い割にって言葉に引っ掛かりがあってちょっと複雑だけど……一応褒めてはくれてるよね。んんー!リヴァイさんはやっぱり難解だ。わからない……本当に、わからない……!

「まぁ……お前は気にせず休め。掃除の時間になったら俺が起こしてやる」
「……はい」

この調子ではまた、一緒に掃除をする流れになるのだろうか?まぁ一緒にやってもやらなくても、リヴァイさんは汚れていれば気付くだろうから指導されるのは同じか。明日からまた気を引き締めなきゃ。

「それじゃ、私先に横になりますね。と言っても同じ部屋ですが」
「あぁ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい、ファーランさん」

今度はリヴァイさんの方を向いて挨拶すると、おやすみ、と言ってくれた。それがなんだかくすぐったくて、でも嬉しくって。ファーランさんだって挨拶してくれたのに。淡白な人だからなのか、返ってきた一言が何故だか特別に思えてしまった。いい気分になった所で目を閉じればすぐに睡魔がやって来る。今日は気を張って疲れた。明日からまた頑張ろう。







――次の日。

「おい。起きろ」
「んんー……ぁ、れ......目覚ましなったっけ……?」

目を閉じたまま右手を上に伸ばして、棚の上にあるはずのスマホを取ろうとするけれどなかなか取れない。右手を曲げたり伸ばしたりしながら探ってみるけれど、そもそもあるはずの棚がないようで、代わりにあるのは固い枕のような感触。

「ん〜携帯……どこぉ?」
「おい。寝ぼけてやがるようだが掃除の時間だ。とっとと起きろ」
「んっ……えっ?掃除……?って!!」

目を開いた瞬間視界の全てをリヴァイさんが占領していて、驚きのあまり飛び起きた。……そうだ。異世界に迷い込んで来た私を、リヴァイさんとファーランさんが助けてくれたんだった。

「おはよう、ございます、リヴァイさん」
「あぁ。……おはよう」
「すぐに顔洗って準備しますね!」

身支度を整えて掃除を開始する。昨日のリヴァイさんの言葉を思い出して同じミスはしないように気を付けながら丁寧に雑巾で拭いていく。とは言え、リヴァイさんのダメ出しを怖がってあまり慎重になりすぎるのも良くないと、ある程度お小言を言われるのは覚悟しながら掃除を進めていたのだけど。

「ほぉ……悪くない」
「ッえ?!ほんとですか?」
「あぁ……お前は筋が良い」

そう言えばリヴァイさん、昨日地下街に迷い込んだ時も警戒心がある事を褒めてくれたし、今だって。悪い所は容赦なくはっきり言われてしまうけれど、良い所はちゃんと褒めてくれる。それが嬉しくて。

「ありがとうございます」
「…………………………」
「え……あれ?」

昨日お礼を言った時も、リヴァイさんは沈黙していた。ファーランさんに至っては様子が可笑しかったし。もしかして……

「…………お礼を言われるのに慣れていない、とか?」
「ちげぇ」

すかさず返って来た否定の言葉。

「じゃあ何で無言なんですか?」
「………………………………」

スルーですかっ!!でも多分これ以上聞いても教えてくれないだろうな……と仕方なく諦める事にした。本当はとってもとってもと〜っても!気になるけれど!

「ただいま〜」
「あっファーランさん!おかえりなさい」
「ッ……あ、ああ。リサ。起きたのか。掃除ご苦労さん」

ファーランさんもやっぱり様子がおかしい。でも、リヴァイさんが教えてくれなかったから何となくファーランさんにも聞きづらくなってしまった。もうそこには触れないようにする。

「そう言えばファーランさんは何処に行ってたんですか?」
「ああ。ちょっと買い出しにな。お前の服とか。でもとりあえず飯食おうぜ」
「えっ私の服?わざわざ、ありがとうございます。後でその話聞かせて下さいね」
「もちろん」

昨日は初めて彼らに料理を振る舞ったのもあって緊張していたけれど、今日は落ち着いて食べる事ができた。元の世界に比べてしまえば勿論味気ないけれど、社会人で一人暮らしをしていた私にとって、こうして一緒に食事が出来る事はやっぱり嬉しい。
食べ終わる頃に、ファーランさんが思い出したように私の顔を見た。

「そういやリサ。お前って歳いくつなんだ?」
「えっ ……ああ。25歳ですよ」
「なんだ、俺らと同い年じゃねぇか」
「えっ……俺”ら”って事は……リヴァイさんも?」

そう言ったらリヴァイさんの鋭い目付きが更に鋭くなって私を射抜く。文句あんのか?って顔をして。あまりのおっかなさに若干怯えながらも何とか言葉を紡ぐ。

「す、すみません……。だって、ファーランさんもリヴァイさんも……年上だと思っていたんです」
「…………あ?」
「ご、ごめんなさい……とても落ち着きがあってしっかりされていますし、頼もしい方々だなって思っていたので」
「……………………紅茶を淹れてやる。ちょっと待ってろ」

えっ?はい?紅茶??このタイミングで紅茶?!そんな貴重な物を?だって今確実に怒ってたよね?それがなんで私に振る舞ってくれる流れになってるの?本当にわけがわからない。疑問符が頭を飛び交っている所に横から助け船が出された。

「嬉しかったんだよ。年上に見られたのが」
「えっ……なんで?」
「アイツ童顔だし低身長なもんだから、実年齢より下に見られることが多いんだ。それを本人は結構気にしてんだよ」

え、何それ……可愛い。あんなにクールでカッコいい人なのにそんな事気にしてるなんて。あ、でも可愛いなんて口走ったらせっかく機嫌が良くなったリヴァイさんに凄まれるだろうから、うっかり喋らないようにしないと。

「同い年なんだし敬語は抜きで良いぜ。呼び方も堅苦しいのはなしだ。な?」
「うん、わかったよ。ファーラン」

その後紅茶を淹れてくれたリヴァイにもお礼を言って、タメ口で話しかけてみた。特に反応はないからきっと嫌なわけではないのだろう。そもそもそう言う事をあまり気にしないのかもしれない。彼自身かなり口が悪いし。


あとがき
原作沿いなので結構ビクビクしています……
元の雰囲気を壊さないように、そして大事な原作シーンで主人公が出しゃばり過ぎないように、かと言って空気にならないように、いい塩梅で書けるように頑張ります……!(難しそう!
にしてもこれ、本編完結してから書いた方が良いのかな……?とか思ったりしてちょっと迷っています。

更新日:2020/06/05

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