小学生の頃、胸の大きさで男子に揶揄われた事がある。
その時に付いたあだ名が「牛」で、教室に入ったりすれ違う度に呼ばれて深く傷付いた。
林間学校や修学旅行の時は、大浴場だったから女子に裸を見られないよう端っこで体育座りをして隠すと、
「リサちゃん隠してる〜!!駄目だよ隠しちゃ!」と皆に聞こえる声で言われ、皆が一斉にこちらを向く。
注目されるのが元々好きではないのに、体に関する事だから尚の事嫌だった。
中学生になってからは牛とは呼ばれなくなったものの、
用事があって声を掛けると視線が胸にいっているのを嫌でも感じた。
それだけに留まらず、違う学年の全く関わりのない男子生徒から「あの子胸大きくない?」なんて友人同士で話してる声まで聞こえて来る。
他にも色々とあって、とにかく、大きな胸に対して嫌な気持ちしかなくなっていた。
だから大学生になった時、初めて”胸が小さく見えるブラ”なんてアイテムがある事を知ってとても嬉しかった。
これで周りの視線を気にしなくて良いって言う気持ちもあったし、何より、同じ悩みを抱えている人が自分の他にもいるって事を知ったから。
それ以来外へ行く度その下着しか身に付けなくなり、何度もリピートして社会人になった。
でもそんな画期的なアイテムに頼りすぎてしまった結果、彼氏ができてからもその事を打ち明けられずに今に至る。
「んっ……ふぁ…んんんっ…」
いつもの、唇が触れ合うだけのキスとの違いに驚いたのも束の間、
そんな事を気にしている余裕もないくらいに貪られる。
求めてくるリヴァイさんがどんな表情をしているのかもわからないまま、
ただひたすら彼の唇を受け入れる。
左手は私の背中に周り右手は頬に添えられていたけれど、次第に頬にあった指が下りて来て首筋を撫でた。
そこで私は元々固まっていた体をより強張らせてしまう。
「………………触っても良いか?」
かなり緊張しているのはリヴァイさんにも伝わっているはずで。
だからこそ確認してくれているんだ。胸を触っても良いか、と。
付き合ってそれなりに長いのに、未だに体の関係がないどころか軽めのキスだってそんなに多くは交わしていない。
こんな状態がずっと続いて良いはずなくて、いい加減次のステップを踏みたいと思っているのにどうしても過去にあった事が原因で勇気を出せずにいる。
リヴァイさんはこんなに気遣ってくれているのに。
「………悪かった」
どうか謝らないで。
「お前が行為に恐怖心を持っているのはわかってる。だから焦らなくていい」
このまま待たせたくなくて、何とか言葉を絞り出す。
「違うんです!」
「?」
「リヴァイさんに、触れられるのが……嫌なわけでは、なくてっ」
「…………………」
「そのっ!!えっと〜〜〜っ入れて下さい!!!!!!!」
「……………………………………………は?」
自分でも信じられない爆弾発言に顔が赤くなる。
胸の大きさを知られるのを何より恐れている上、咄嗟に言わなければならない状況下だったから仕方ないかもしれないけれど、
その他諸々の工程を全てすっ飛ばしていきなり大胆な事を言ってしまった。
「焦らなくて良いとさっき言っただろ」
「っ………でもっ」
「無理に俺に合わせようとしなくていい。
前戯を適当に済ませてする行為なんて、ただの性欲処理みたいだろ。それならいっそしない方が良い」
違うの。本当に無理に合わせようとしたわけじゃないの。
でもなかなか勇気が出せず、結局そのまま黙り込んでしまう。
「一緒に横になって、抱きしめるくらいは許してくれるよな?と言うか許せ」
リヴァイさんの胸に顔を埋めて自分の情けなさに打ちひしがれていたけれど、それを慰めるかのように優しいリヴァイさんの手が私の頭を撫でてくれていた。
リヴァイさんと会った週末が空けての月曜日。
仕事帰りに下着ショップに寄った。
買いたい物はいつものではなく、ワイヤー入りの普通のブラだ。
あんなに優しくしてくれるのだから、私も隠さずにきちんと答えたい。
人に見られる前提で買うのは恥ずかしいけれど、
機能面や値段で決めていた今までと違って、色や柄、触り心地などを考えて選ぶのは楽しかった。
あれやこれやと吟味しているうちに、男女のカップルがやって来る。
「わぁっ〜〜っこれ超でかい!!」
「お前が付けたらスッカスカだよ」
「ひどい!どーせ私は小さいよ。男は巨乳が良いんでしょ!」
ケラケラ笑いながら話すカップルに何となく居心地が悪くなってしまう。
自分が手に取っているブラを見られたらと気が気じゃなくて、急いで戻してその場を離れようとしたら。
「いやぁ〜〜そうでもないよ?Cカップくらいが理想じゃね?でかいと垂れてそうだし」
気にしない、気にしない。
こんな所でこんな事言う人の言葉なんて。
そう思うのに、気分が優れないまま結局お店を出てきてしまった。
あんな発言笑い飛ばせれば良いのに、いちいちくよくよしてしまう自分が本当に嫌になる。
たったの一言で簡単に流されてしまう決意と一緒に、リヴァイさんも何処か遠くに行ってしまうのではないかと急に不安にかられる。
居ても立ってもいられなくなって、昨日歩いたばかりの道を、転びそうになるのも構わず必死に走った。
「リサ?お前が平日に訪ねてくるなんて珍しいな…何かあったのか?」
出てきたリヴァイさんをそっと抱き締めると、心配そうに名前を呼ぶ声が聞こえる。
とりあえず入れと肩に腕を回してソファまで誘導してくれた。
突然来訪したかと思えば何も言わない私を迷惑がる事もなく、いつも通りに接してくれるリヴァイさんはやっぱり優しい。
温かい飲み物を出してくれて、一息付いていると夕飯までご馳走してくれた。
気持ちは先程より落ち着いて来たけれど、それでも切り出す事は出来ずにいて。
今日はもう遅いからとこのまま泊まる事になり、入浴を済ませた。
週末はリヴァイさんの家で過ごすことが多いから着替えは自分の物をあらかじめ置いているけれど、下着だけはバレないようにいつも持ち帰っていたからなかった。
仕方なく着てきたものをもう一度着ようとした所で手が止まる。
いつまでもこうして隠しているわけにはいかない。何れ知られてしまう事なんだから。
早いか遅いか、それだけ。
何とか自分を奮い立たせて、もう一度だけ、勇気を出してみる事にした。
「リ、リヴァイさんっ!!」
「あぁ、出たか。待ってろ、今」
「今まで、嘘ついて…隠していてすみませんでしたっ」
「あ?……………………………っ?!」
前開きのワンピースのパジャマを着て、胸の前で交差していた腕をほどくと、ブラをしていない豊満な胸が露になる。
固く目を閉ざしながら、沈黙は辛いからと早口で捲し立てる。
「大きい胸がずっとコンプレックスで、大学の時から胸が小さく見える下着をつけてました!本当にごめんなさい!!
あの、嫌かもしれませんが、私は……………んっ」
グイッと顎を掴まれ、深く口付けられる。この前のキスにも驚いたけれど、今日はそれよりも少し乱暴で、とても熱い。
「んんんっ………ふぁっ……く、くるし、リヴァイさんっ……」
「ずっと触れるのを我慢してた。お前に嫌な思いをさせたくなかった。なのに急にそんな格好で出て来られたら抑えられるはずねぇだろ」
「ご、ごめんなさ…」
「一応聞くが、行為を拒んでたのはそれが原因で俺自体に問題がある訳じゃねぇんだな?」
「はい、もちろんです」
今度は深いキスをされながら、胸のラインをゆっくり一撫でされる。
そのまま下から持ち上げられて胸を揉まれると、先の展開を想像してしまい変な気分になってくる。
「やわらけぇ……」
「ぁ……………………」
「服着ててもどこにあるかはっきりわかる」
「ッ……………………」
胸以外は普通体型だから、そこだけピッタリフィットしてしまって恥ずかしい。
「エロい格好。こんな姿見せといて今更ダメとか抜かすなよ?もうやめねぇからな」
返事の代わりに、私の胸に添えられたリヴァイさんの手を包み込む。
それを合図にベッドまでいき、後ろから胸を揉まれる。
「ッ…………はぁ」
上から持ち上げたり、円を描くようにされたり、ふるふる震わせたり、色んな揉まれ方をされてそれだけで身体が熱くなってしまう。
時間をかけて、ゆっくりと、核心部分には触れずに、でも時々際どい所を撫でられ、段々じれったくなってくる。もっと性急に事が進むと思っていたのに。
「触れてもいねぇのにここ、ビンビンだな」
「ッ!」
「触って欲しいなら強請れ」
恥ずかしさよりも触れて欲しい気持ちが強くなっている私は、少し躊躇いながらも何とか口にする。
「さわっ....てほし、いです………………ぁぁあっ!!!」
じわじわと溜まっていた全身の熱が脳に直接流れて行って何もかも溶けてしまいそうだ。
「まだ服の上からだがそんなに良いのか?なぁ?リサ」
「んぁっ…あああっ……リヴァイさっん、が、焦らす、から…」
「散々俺を焦らせたのはお前だよな?なら俺とも遊んでくれよ」
「あっあっ…ふ、ぁぁぁあっ」
耳から直に入るリヴァイさんの声に。
頂を掠めるその指に。
背中に感じる体温に。
意地悪されてるはずなのに、それらの全てが快楽の材料になっている。
ふと、頂に触れるのをやめたリヴァイさんが再び胸を揉みだすと、予想だにしない事を聞かれた。
「それにしてもよく感じる体だな。普段から自分で弄ってんのか?」
「っはぁ……っえ?!」
私だってもう社会人だから、そう言う事はそれなりに経験してる。
だけど人に言うなんて……
私の反応で察したらしいリヴァイさんが何か思い付いたように悪い顔をして笑っている。
すると今度はリヴァイさんが私の手を掴み、頂まで誘導すると触るように促してくる。
無言で自慰を強要されているようでとても恥ずかしいけれど、それすらも興奮してしまってもうどうしようもない。
「ぁ…んっ」
「こうやっていつも一人で楽しんでたんだろ?俺に内緒で」
「んぁっ」
「こっちはずっと我慢してたってのに。悪い子には躾が必要だよなぁ?」
「ぁぁっんっごめんな、さい。んぁっ。でも、一人じゃ、ぁっん、な、い、ですっ」
「あ?」
だってずっと、リヴァイさんにこうして愛してもらう事を願っていた。
だから私には…
「ずっと、リヴァイさんがいました」
「!」
「リヴァイさんに触ってもらう事、ずっと…想像していました。だから一人じゃないです
……でも、本物の、リヴァイさんの方がずっと気持ち良……えっ?リヴァイさん!?」
後ろにいたリヴァイさんが前に回り込んで、パジャマのボタンをお腹辺りまで外すと胸が露になる。
それをじっと見つめてくるから恥ずかしくなって腕で隠そうとしたけれど、難なく阻止される。それどころか
「肘曲げて手は軽く肩に添える。で、脇締めろ」
掴んでいた私の腕を誘導して、ポーズを取らされる。
強調される自分の胸のいやらしさに震えていると。
「なぁ。お前の中の俺は、どんな風にお前を弄ってたんだ?教えてくれよ」
「ッ!それは……」
「教えてくれなきゃこんな恥ずかしい格好のままだが良いのか?」
優しいと思っていたリヴァイさんが今まで見た事ないくらい意地悪くなっているのに、
それさえもカッコよく見えるからズルい。そんな所にまでときめいてしまっている私もやっぱりどうかしてる。
「わ、たしの」
「お前の?」
「ッ………………私の胸、好きだって言ってくれて。揉んでもらったり、その……」
「何だ?」
「!ッ…………………ち、くび、指で摘まんだり、舌で舐めたり、吸ってもらったり、して…………………………ああああっ!!!リヴァ、イ、さっ、はっあぁ…」
リヴァイさんの右の指で私の左胸を、リヴァイさんの舌で私の右胸を弄られて、電気が走ったような刺激を受ける。ざらりと纏わりついてくる舌にあられもない声を上げてしまう。
「んあっ…ぁっ…ふっあっ!まっ、まっ、て、んぁっ…」
「待たねぇ。綺麗で感度が良いお前のココ、もっと触らせてくれよ。好きだからな」
「!」
「だからもっと乱れろ」
「ああっまたっ、舐め……リヴァイさっんんっ…リヴァイさんっ……わ、たし、もう……」
「これじゃお前の逝く顔が見づれぇな…」
唇を離し、指での刺激に切り替えたリヴァイさんは恐らく私の顔を見ているんだろう。
私はあまりの気持ちよさに、目を開ける事もできずただただリヴァイさんによって与えられる刺激を甘受する。
「あっ…もう、ダメっ!ああああっ………………ぁ………」
「………………………リサ」
視界が真っ白に弾けた直後、名前を呼ばれたような気がした。
「すみません!私ばっか気持ちよくなってしまって。リヴァイさんしてないじゃないですか………」
「今まで頑なに拒んでたからな。今日の所は、お前のトラウマを俺で塗り替えられればそれでいい」
「!!!」
格好良すぎて、愛おしくて、きゅんきゅんして。
なんて言えば表現できるのかわからないけれど、とても心に響いた。
だって。
自分で言うのも何だけど、今日のえっちはかなり盛り上がったと思う。胸だけで終わるなんて絶対辛かったはずなのに。
それでも、自分の欲より私を優先してくれたリヴァイさんはとっても優しい。
「お前のトラウマが何だか知らねぇが、胸だけで逝っちまえる立派なもん持ってんだ。大きさなんて気にするな。だがまぁ………
大きいのを気にするお前を見るのは悪くなかった」
リヴァイさんは私が思っていた以上に格好良い人で、こんなにも私の事を想ってくれる人だった。
「ところで…………」
「はい?」
「お前、下は履いてんのか?」
「………………………」
「履いてねぇんだな?」
今の話を撤回したいくらい意地の悪い顔をした彼が目の前にいる。
胸だけで終わるのはやっぱりなしみたいだ。
あとがき
胸が小さくて悩んでいる主人公は見かけますが、
大きくて悩んでいる子の話はこの界隈で読んだ事がなかったので書いてみました。
更新日:2020/05/14
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