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縮まる距離のきっかけは



「へーーーーちょーーー!!!」

ちっ。うるせぇのが来やがった。
だが無視を決め込んだところでコイツはしつこく追いかけてくるだろう。
むしろ周りにいる人間を薙ぎ倒しながら走ってきて、余計な被害者が増えることは目に見えている。
だから仕方なく立ち止まって声を掛けた。

「何だ」
「何か欲しいものありませんか!?」
「あ?欲しいもの?」

コイツはまた何かよからぬことでも考えてやがるのか。
何せあのクソメガネとつるんで毎回ろくでもないことを企む奴だからな。
きっと今回も…

「はいっ!いつもお世話になってる兵長に何かお礼がしたくて!」
「……………何もいらねぇからお前は自分の部屋をなんとかしろ」
「なんとかとは?」
「掃除しろと言っている」

アイツの部屋はクソメガネ並みに汚ねぇ。

「えーーーそれじゃあいつもと変わらないじゃないですか〜!つまらないですよっ。」
「いつもって言えるほどてめぇが掃除してるか?あ?」
「うっそれは……」
「俺は忙しい。良いからもう行け」

こんな粗末な扱いをしているが、一応コイツとは恋人同士である。
残念がっているアイツに少しだけ悪い気はしたが、適当にあしらっておく。
と言うのも俺たちが所属している調査兵団は壁外で命を落とす確率の高い組織であり、俺はそこの兵士長だ。
部下の命を預かる立場にいる俺が恋人に現を抜かすわけにはいかない。
まぁ恋人らしいことをろくにしていない俺達だから、少しくらい何かしても罰は当たらないかもしれねぇが。







「あっ!リヴァ〜イ!」

夕方、いったん仕事に区切りをつけて廊下を歩いていると、もう1人のうるせぇ奴が近付いてくる。
それを無視して早歩きすると

「ひどっ!気付いてるよねぇ!?ちゃんと大事な話があるんだって!!」
「いつもは大事じゃねぇ自覚があるみたいだな?」
「あのねっ!今日の夜楽しみにしてて!
リヴァイにとってと〜〜〜っても嬉しいことが起こるから!!」

都合の悪い事をなんなくスルーしやがるコイツの言葉に、嫌な予感しかしねぇ。

「何企んでやがる」
「べっつにぃ〜?なーんも?ただ………
もうちょっと、恋人との時間作っても良いんじゃないの?」
「ちっ…うるせぇな。てめぇだって俺と似たような立場じゃねぇか。わかってんだろ」
「まぁね〜 でも!あんま突き放してばっかりいたら、あの子だってどうなるかわかんないよ〜?」

そう言われたとしても、だ。
アイツは確かにアホだが自分の立場はきちんと弁えている。
人前で抱きついたりベタベタ触れてくるような事はない。まぁそもそも2人きりの時でさえそう言った事はしてねぇから当然だ。

ハンジと別れた後、今夜リサが俺の部屋に来る事を許可したとエルヴィンに言われた。
たまには密会も良いだろう?と真顔で。こいつら揃いも揃って余計な事しやがって。
そもそもお前が知ってる時点で密会になってねぇだろうが。




仕事を終えて就寝時間を迎えた頃にリサがやってきた。

「欲しいものは何か考えて頂けましたか?」
「…………………別にいらねぇよ」

俺の返事を予測していたのか特に落ち込む様子はなく、やっぱり、と呟いた後、何を思ったのか俺の腕を掴んで執務室の奥にある寝室のベッドまで連れて行かれた。

「なんだ?」
「大丈夫です。悪いようにはしませんからっ!
 あのっ だからっ し、失礼します!!」

どもってる奴に大丈夫だと言われても全然あてに………?!

ペロリ、と唇を舐められた。

急な展開に思考が付いていけず、続けてペロペロと犬のように舐めるからついそのまま受け入れてしまった。
と言うより、硬直していたから受け入れざるを得なかった。
まぁ恋人同士で今は誰もいないのだから、少しくらい自由にさせてやっても良いかとそれを咎める事はなかった。
だが、まさか・・・・

「ッ!?」

シャツの釦を一つ外して鎖骨まで舐めて来るとは思わなかった。

「っおい、待て!」
「だいじょぶです。こういうの、好きなんですよね?」
「は?何のこと言ってやがるッ どうせまたクソメガネの入れ知恵だろ?」
「そうです」
「ちっ。あのな?俺を喜ばせたいんだろ?だったらクソメガネの言われた事なんて真に受けるんじゃねぇ。いったん落ち着け。」
「…………こうされるの、好きじゃなかったですか?」

顔を赤らめて、潤んだ目で舌を少しだけ出してるコイツに、変な気分にさせられる。
メガネのせいでややこしい話になってんだろうに、こんな初めて見る顔を晒されたら拒む気も失せちまうじゃねぇか。

「はぁ。もういい。嫌じゃねぇから好きにしろ」
「!っはい!」

目を細めて嬉しそうに笑ったと思ったら、今度は耳を舐めてくる。




しばらくの間、体中を舐め回された。
鎖骨だったり胸元だったり、脱がされたズボンに隠れていた太ももだったり。
だがこっちからしてみれば、ただ舐められている状況に酷く焦らされているようで。
きっとコイツはそんな事何も分かっていないんだろう。

「………リサ」
「んっ ふぁい?」

クソッ。舐めながら声出してんじゃねぇ。

「いつまで、続けるんだ」
「えっ?………あっ眠りますか?それなら、兵長が眠るまでずっとこうしてます!!」


は?おい待て待て待て。このまま眠るまで続けるだと?
俺の核心部分はさっきから悲鳴あげてんのにこのまま眠れってのか?
そりゃいったいどんな拷問だ?

「兵長、さっきから顔怖いです」
「当たり前だ。ずっと続けさせられてる俺の身にもなれ。限界だ。早くしろ」
「!?えっ?早くしろとは?」
「ハンジに言われたんだろ?」
「えっ?何をですか?」

コイツ、まさかこの行為が何だかわかってねぇって言うんじゃねぇよな?
ここまで来てお預けだと?ふざけるな。

「私は今みたいに、舐める練習をしただけですよ?
 団長とハンジさんが教えてくれて」

っ!?練習?練習ってなんだ…?
おいまさかエルヴィンとクソメガネにもこれやったってのか?


元々余裕がないせいかおかしくなったのかもしれない。
氷のように冷たいのか、それとも熱いのか。よくわからない怒りが一瞬で頂点に上り詰めてしまった。
冷静さを失っているはずの俺が身なりだけはきちんと整えると、リサに構わず部屋を飛び出した。


当然行き着く先は


「おい、エルヴィン!!」

扉を足で思い切り蹴飛ばすと、けたたましい音が鳴り響く。
就寝時間を過ぎている事もお構いなしにずかずか踏み込むと、案の定あの済ました顔で「何だ?」と言ってくる。

「てめぇ人の女に何させてやがる」

胸倉を掴むが顔色一つ変えないコイツに更に怒りが沸いてくる。

「あぁ。余計なお世話だと思いしばらく様子を見ていたんだが、あまりに進展がなさすぎたから一つ手を打ったんだ。良かっただろう?」
「ぁあ?良いわけねぇだろう!あんな練習させやがって」

更に怒りをぶつけようとした時、もう一人の元凶が団長室へとやってきた。

「今すぅぅうっごい音したね!?ぜったいリヴァイでしょ〜〜〜お楽しみのはずなのに!どうしたの?」
「てめぇらがアイツに変な事させやがったんだろうが」
「変な事って!恋人同士なら全然普通だよ?」
「あぁ。恋人同士ならな?だがお前らはアイツの練習相手になったそうじゃねぇか」

そう言った所で、エルヴィンとハンジがぽかんと間抜けな顔をする。

「えっ?練習相手?」
「とぼけんじゃねぇ。舐める練習したんだろ?お前らで」


「「「………………………………」」」


「リヴァイ。勘違いしているようだから念のため言っておくが、練習相手は俺達ではなくバナナだ。
ハンジがリサに渡してそれをお前だと思って舐める練習をするように言ったんだ。
そこを俺が就寝後お前の部屋へ入る許可を出してやった。俺達は相手どころか彼女が練習している所すら見ていないよ」




………………………………………………は?

そう言われて少しの間思考が停止したが、改めてリサの言われた言葉を思い出す。
エルヴィンとハンジに教わって練習した、とは言っていたが、
アイツは一言も”エルヴィンとハンジに教わりながら練習した”とは言ってねぇ。

…………俺の勘違いだ。

冷静に考えればコイツら相手に舐めるはずなんてねぇのに、焦らすに焦らされた事で頭がおかしくなっちまったんだ。
いやそもそも練習相手はバナナだとか抜かしやがるコイツらも何言ってんだ。
セクハラじゃねぇか普通に。

「わかったか?」

と淡々と言われた時、先程までの自分の動揺っぷりに急に恥ずかしさが込み上げてくる。


「あはははは〜〜 リヴァイ〜!はっずかしーー!!!!」
「………………………」

静かに睨みを利かせていると

「って言うかなんでそんな勘違いしたの?その様子じゃリサにぶっ放せなかっ」
「…」

クソメガネを勢いよく蹴り飛ばして少し落ち着くと、エルヴィンの顔も見ずに団長室を後にした。



自室に戻って来たら、リサが床で蹲っていた。
コイツもコイツでやってることは相変わらずぶっ飛んでるし、今回の件も無性に苛立ってしょうがねぇが元は俺を喜ばせたくてやった事だ。
端から俺が欲しい物を言っていればこんな事にはならなかったと思うと怒るに怒れない。

「おい」
「ぁ………」
「寝るぞ」

さっきまでの事でどっと疲れが増した俺はベッドに入ると、
布団を持ち上げてリサが入りやすいようにスペースを作ってやる。
一瞬躊躇っていたものの大人しく入ってきたリサを胸に抱きしめたら、謝罪の声が小さく聞こえた。

「さっきも言ったが行為自体が嫌だったわけじゃねぇ。」
「じゃあ何で途中で出て行ったんですか?」
「…………………………………………お前がバナナの意味を知らなかったせいだ」
「えっ?バナナの意味ってなんです?
 ってか兵長!バナナで練習した事知ってるんですね!って事は、さっき部屋を飛び出したのはエルヴィン団長かハンジさんの所へ行くためだったんですね。
で、バナナの意味って??兵長だと思えって言われてよくわかりませんでしたが」

俺の”あの部分”に見立てているなんて言えるわけねぇだろうが。

「もういい。それとわからねぇからって他の奴に聞き回るのもなしだ」
「えー!?気になるのに……あっそう言えば」

もぞもぞと動くコイツが取り出した物は。

「ポケットにバナナを入れっぱなしにしていました!」
「それお前が舐めた奴だろ?」
「そうですけど……」
「きたねぇな」
「酷いです!ちゃんと丁寧に拭きました!事後処理ばっちりです!!」
「っっってめぇ事後処理とか言ってんじゃねぇよ、狙ってやがんのか?」
「はい?」

もういい。こんなアホは放っといてとっとと寝てやる。

「私、バナナ好きなんです。簡単に皮が剥けてすぐに食べられますし、何より美味しいですよね」
「おいやめろ」

こんな流れだから変な想像しちまうだろうが。
さっきの行為と同じように苦しい戦いを強いられるのは御免だ。……既に戦わされている気もするが。
いったい何の試練だってんだ。

考えてみたら今日はコイツに振り回されっぱなしだった。
いやいつも振り回されてはいるが、今日のは質が悪かった。
だから。


リサの両頬を掌でがっちり挟み込み、軽く口付ける。
目を瞑っているから表情は見えないものの、息遣いから驚いている様子が手に取るようにわかった。
そのまま舌を入れて歯列をなぞり、逃げ惑う舌を絡めとった後、唇を軽く吸って離れる。

「キスはこうやってするんだ。わかったな?」

犬のようにペロペロと舐めまわすだけのコイツの行為に反応してしまった事、
そしてらしくもなく取り乱して辱めを受けた事への仕返しとばかりに言ってやった。
真っ赤に染まるコイツの顔を見れた事だけは良い収穫だったと、少しだけ気分を晴らすことができた。



だが次の日、キスした時に見せた顔と同じ顔をしたリサが廊下を歩いていた。
俺だけが見れる特権だと思っていたのにそれを無防備に晒されて再び怒りが沸いてくる。
そこにうるさい奴がやって来て。

「リッッッヴァイ〜〜!!!生殺しで可哀想なリッヴァ〜イ!リサから聞いたよ!
 まさかリサがバナナを全身だと思ってたなんて思わなかったんだよ〜!って言うか普通思わないでしょ〜!ごめ〜ん!次はフィニッシュ決められ…グハッ」


あいつ……聞き回るなって言っただろうが!……いや違う。
きっとあんな事があったからクソメガネの方から質問されて断れなかったんだろう。
後でもう一発メガネに蹴りを食らわせてやるか。


にしても。
今までろくなスキンシップをして来なかった俺達だが、外野がうるせぇからこれを機にもう少し深い仲になっても良いのかもしれねぇな。
そのきっかけがあの下世話なクソメガネと事の成り行きを楽しんでいたエルヴィンだってのは気に食わねぇが。


あとがき
下品を通り越して突き抜けたギャグ+兵長がアホなヒロインに翻弄されてる所を書く予定だったんですが、全てが中途半端になってしまいました…
バナナとか酷いんですが、いやなんかもうすみません。
でも、これでも初めて完成させた作品なので上げます(これが初めてって言うのも酷いけど)

更新日:2020/5/14

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