ジャーファルと旅立つ彼女

シンドリアの密偵。
この話は、シンドバッド王の他に、八人将しか知らない国の極秘事項。

密偵部隊というものが3人で結成されており、隊長は王宮で料理人も務めているエナ。
3人は、いざという時には戦えるように、鍛錬は日頃から欠かさない。たまに自分やシャルルカン先輩とも手合わせをする。
エナがもともと会得していた忍術を、隊員のスパダとアルコに教えたのだ。

今日は王宮の玄関から部隊を見送る日。
何日空けるかは分からないので置いておくとして、心配な事が1つある。ジャーファルさんだ。

マスルール「ジャーファルさん、大丈夫すか」

ジャーファル「へ?何の事ですか?マスルール」

マスルール「エナさんすよ。寂しくないんすか?」

ジャーファル「ああ、その事なら大丈夫ですよ?」

マスルール「本当すか?」

ジャーファル「なんですかその目は。今までにも何度かあったじゃないですか、こんな事は」

マスルール「今、バルバッドでは内乱が起きてるそうっすよ」

ジャーファル「内乱ですか…まあ、大変でしょうが、大丈夫でしょう」

マスルール「どっちなんすか」

ジャーファル「私達が現地に赴くわけではないのですから、出来る事はありません。彼女らを信じて待ちましょう」

そう言ったジャーファルさんの目は澄んでいた。



エナ「シンバー!作ってきたよ!」

シンドバッド「まってたぞ!オムライス!」

エナ「はい、カツレツだよ〜」

シンドバッド「わぁ、美味しそう!ってカツレツ!?」

エナ「うん、カツレツだよ」

シンドバッド「あれ、俺オムライスってリクエストしなかったか?」

エナ「オムライス?そうだっけ?」

シンドバッド「あれ、オムライスだったような…」

マスルール「2人共ボケてるっすね」

ジャーファル「やめなさいマスルール、シンとエナは意図的にボケてるんじゃないんですから」

マスルール「わかりました、見守るっす」


シンドバッド「んんん、オムライス?カツレツ?」

エナ「あ、でもね、オムライスも作ってあるんだよー」

シンドバッド「本当か!」

エナ「はーい」

シンドバッド「おおお!本当だ!」

エナ「召し上がれ!」

ジャーファル「もう、あるなら出せばいいものを。本当に馬鹿というか天然というか…」

マスルール「ツッコマないシンさんもシンさんっす」

ジャーファル「気付いてないだけですよ、ここはツッコむ所だと」



そして、発つ時は来る。

エナ「じゃあ、行ってきます。シンドバッド王様」

シンドバッド「おう」

ジャーファル「ここで見送りでいいのですか?」

エナ「いいんだよー」

ジャーファル「エナのワガママじゃないんですか?スパダもアルコも時にはこのダメ隊長にガツンと言って下さい」

スパダ「大丈夫ですよ、俺達、言う時はしっかり言ってます。な、アホ隊長」

エナ「照れちゃうなぁ、スパダぁ」

アルコ「別に褒めてないですよ」

エナ「あはは」

アルコ「それよりエナ先輩、愛しのジャーファルさんの所、行かなくて良いんですか」

スパダ「そうだぜ、見せつけてくれよ」

エナ「あ、」

ヤムライハ「ほら、ジャーファルさんも!」

ジャーファル「ちょっと!アルコにスパダ!ヤムライハまで!」

ジャーファルが慌てている間に、エナはジャーファルに近寄った。


エナ「ジャーファル、」

ジャーファル「あ、あ、はい」

エナ「ん」

ジャーファル「え!?」

ヒナホホ「おおー」

ピスティ「きゃあ!」

エナの唇は優しいリップ音を立てて、ジャーファルの右頬に吸いついた。

ジャーファル「〜〜〜っ!エナ、今、キスを!」

エナ「キスしたよ」

ドラコーン「行ってきますのキスだな」

マスルール「エナさん積極的」

シャルルカン「暫くこのイチャつきは見れないんだな」

スパルトス「あ、サニーサイドアップのイヤリング付けてる」



ジャーファル「ああもう!エナ!」

エナ「わっ」

本当にされると思っていなかった突然のキスにぽかんとしていたジャーファルは気を戻し、逃げていくエナを腕の中につかまえて、強く抱きしめる。

ジャーファル「…帰ってくるのですよ」

エナ「大丈夫、あなたが待っていてくれる所に、必ず帰ってくるのです」



そうしてエナ、スパダ、アルコの3人はバルバッドへと旅立った。


28.3.25
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