彼らは消えないでと縋る


ジャーファル「エナ、おはようございます」

エナ「今何時?」

ジャーファル「もうお昼時ですよ」

エナ「そっか、早いなぁ」

ジャーファル「貴女が遅いんですよ」

エナ「目覚めたらジャーファルが隣に寝てるのが1番幸せなんだけどなあ」

ジャーファル「エナの目覚めの悪さが直れば実現するでしょうね、頑張って」

エナ「それは酷い、私の寝坊癖が直らなくても、平和な世になれば実現すると思うよ?」

ジャーファル「私が早起きしなくても良い世の中?」

エナ「そう、それを今シンバと作っているところだね、がんばろーう!」

ジャーファル「エナの気合い入れはイマイチ、何か欠けますね」

エナ「それスパダにも言われたよ」

ジャーファル「こら、今くらい他の男の名前は出さないで下さいね。今からもう一度添い寝してあげますから」

エナ「やったあ!」

ジャーファル「あ、シンから伝言です」

エナ「何?」

ジャーファル「エナにはシンの元で実働部隊として動いてもらうそうですよ。それがエナの、ここでの次の任務です」

エナ「了解ー」

ジャーファル「さ、これで仕事の話は一旦終わりです。ゆっくりエナを楽しませてもらいますよ」

エナ「手始めに何をする?」

ジャーファル「抱きしめて、肩に顔を埋めて、キスマークを付ける」

エナ「あ、もう決めてたんだ、」

ジャーファル「はい、まあ、咄嗟に」



城から戻ったアリババとシンドバッドは、霧の団の皆を集めてアブマド王との交渉が決裂した事を伝え始めた。

シンドバッド「世界はまだ理不尽さで溢れている。それと戦う者達を受け入れる。その為に、俺は国を作ったのだから」

エナ「流石シンバだね、あの器の大きさは誰にも真似できない」

ジャーファル「そうですね」

その時、突如ジュダルが現れた。
アラジンがマギである事に驚いたジュダルは、アラジンを試すつもりで彼を殴る。
そしてアリババをバカにしたジュダルにアラジンは怒り、杖をかざす。
アラジンとジュダル、マギ同士の戦いが始まろうとしていた。

シンドバッド「やめるんだ二人共!」

ジュダル「黙ってろシンドバッド、これはマギ同士の戦い。ただの人間に口出し無用。今のお前には俺を止めることはできねえ。分かってるぜ、金属器一つも無いんだろ」

シンドバッド「チッ、マスルール」

だが、マスルールでもジュダルにふれることさえかなわなかった。

マスルール「やっぱりダメです。俺達今、眷属器使えないんで」

ジュダル「さあ、始めようぜチビのマギ!」

マゴイを打ち合ったが、互いのマゴイを打ち消し合うだけだとジュダルが気づき、彼らは魔法で勝負することに。

ジュダルの雷魔法に、アラジンはウーゴ君で対抗する。

ジャーファル「大丈夫ですか、エナ」

エナ「抱えてくれなくても避けれたのに…でも、ありがとう」

ジャーファル「いえ、まだ体が完全では無いですからね、頼って下さい」

マスルール「ジャーファルさんエナさん、姫だっこでいちゃついてる場合じゃないっすよ」

エナ「あ、ジュダル、氷で浮いた!?」

シンドバッド「あれは浮遊魔法…複数の魔法をあわせると、何て奴だ」

ジュダル「くらえ、サルグ・アルサーロス!」


エナ「…シンドバッド様。私達には、何もすることはできないのでしょうか」

シンドバッド「ああ、ここはウーゴ君の活躍パートだからな」

エナ「そういう問題なのですか」

シンドバッド「そういう問題だ」

エナ「なるほど」

ジャーファル「こらエナ、納得しない」


マスルール「エナさん、そうこうしている間にジュダルがウーゴ君にやられましたよ」

シンドバッド「何て凄まじい力だ…」

アラジン「ウーゴ君!ウーゴ君!」

ウーゴ君は、合掌させた手を空へと大きく振りかぶり、ジュダルにトドメを刺そうとしていた。

シンドバッド「まずい!全員逃げろ、」

エナ「降ろして、」

ジャーファル「後でどうなっても良いのならどうぞ」

エナ「嫌だ」

ジャーファル「じゃあ捕まってなさい」


それから、ジュダルは倒れた。


エナ「ジャーファル、あのね、これはきっと煌帝国のお迎えパターン…」

練紅玉「あらあら何なの、この化け物は」

エナ「ほら」

ジャーファル「ここで当たる貴女が怖いですよ」

エナ「長年悪運を引き寄せる男について来てたせいで、研ぎ澄まされた勘だよ」

ジャーファル「それなら私にもありそうだ」


練紅玉「随分と私達の可愛いジュダルちゃんを虐めてくれたみたいじゃない」

夏黄文「間一髪、助けることが出来ましたね」

練紅玉「でも大怪我してるじゃない?ちょっと夏黄文、ちゃんと治しなさいよ、死んだら一大事よ」

夏黄文「分かっておりますよ、姫君。彼は私達の大切な神官なのですから」

ジャーファル「シン!」

シンドバッド「ああ」
(しかも、あんな大掛かりな魔法道具まで使っている…只者じゃない。どういう身分の奴らなんだ)

練紅玉は金属器を発動させ、ウーゴ君を倒した。

エナ「あれは、水の金属器使い」

アラジン「ウーゴ君!」

エナ「何て酷い…」

ジャーファル「彼女はどのような身分か分からない者です、エナ、口を慎みなさい」

エナ「ごめん」

練紅玉「どうよ、夏黄文」

夏黄文「流石であります姫君!」

練紅玉「ジュダルちゃんの具合はどう?」

夏黄文「応急処置はしてありますが、治すにはきちんとした施設が必要ですね」

練紅玉「じゃあ早く行きましょ。…!」

その元に、アラジンが飛んでくる。

練紅玉「何、あなた。私達は化け物に襲われていた身内を助けただけよ」

アラジン「違う!ウーゴ君は皆を、僕を守るために戦っただけなんだ!先に手を出してきたのはその人だ!」

練紅玉「貴方があの化け物の主ね?下に居るあいつらも仲間なのね?閻心、閻体、閻技、やっておしまい。
この子は私が片づけるわ、下のゴミ達は3人で皆殺しよ」

シンドバッド「止めろマスルール!」

大柄な閻体を、マスルールは止めるのに精一杯だ。

シンドバッド「マスルールでも互角だと…!こいつは、やはりあの、」


少し離れた所で、モルジアナを閻心が襲う。

モルジアナ(早すぎて捌ききれない!)

ジャーファル「モルジアナ!協力して皆を守るんだ!」

閻心を止めているジャーファルに、エナが襲いかかる。
エナはクナイを閻心の急所狙って投げた。
しかし、所詮病み上がり。思うように急所には当たらない。

ジャーファル「エナ、無理をするな!」

一応閻心の動きを抑えたエナは、ジャーファルの所へ戻り、荒い息でその胸へ倒れ込む。

ジャーファル「バカ、病人は私に守られてなさい」

エナ「ごめん」


そして、シンドバッドは練紅玉に話しかけ、彼女を止める。

シンドバッド「姫君、現在私は訳あってこの国に滞在しています。もし貴女もそうなら、然るべき場所でお会いしたい」

練紅玉「わ、分かったわよ!皆の者、帰るわよ!」

夏黄文「ああ、はい、え、姫君しかし、」

練紅玉「良いから今日は帰るのよ!良いこと!?別にあんたに言われたから帰るんじゃないからね!」


そうして、煌帝国軍は帰って行ったのだった。



ジャーファル「シン」

シンドバッド「おお、どうだった?ジャーファル」

ジャーファル「幸い、死者は出ていないようです」

シンドバッド「そうか、とにかく手当てだ。態勢を立て直す」



シンドバッド「…ジャーファル、悪かったな」

ジャーファル「何がですか?」

シンドバッド「エナはしばらく俺の傍につかせると言っておきながら、早速任務に出してしまった」

ジャーファル「エナの事ならきっと大丈夫ですよ。少々、病み上がりなのは気になりますがね」

シンドバッド「そうか、ありがとう」

ジャーファル「いえ」

シンドバッド「でも…お前らちゃんとヤってるか?ひと月も会ってなかったんだろ?」

ジャーファル「余計なお世話ですよ」

シンドバッド「んなこと言っても、エナはお前から逃げてしまうぞ?」

ジャーファル「はは、まさか」



ジャーファル「煌帝国が去っていきますね」

マスルール「呆気なかったすね」

シンドバッド「エナ」

エナ「はい」

シンドバッド「ジュダルを回収した煌帝国、奴らの後を追え。詳細は後日伝える」

エナ「了解。行ってきます」

シンドバッド「ああ、任せた」

エナ「ジャーファル」

ジャーファル「え、んんっ」

エナ「守ってくれてありがとう」

ジャーファルの唇に物足りないキスとお礼の言葉を残して、エナは煌帝国の後を追い去っていった。

28.3.29
全力で切ない気持ちを我慢するジャーファルさん
(題名、彼らは消えないでと縋る、の彼らはアラジンとジャーファルの事を指しています。)
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