あの日から少しずつ、あたしの中で何かが変わりはじめている。
「…っ…はぁ」
この前の件であたしは少し反省した。やはり阿近の言うとおり少しは稽古もしなければならない、じゃないと制御だって出来なくなる。というわけで今までまったくやっていなかった稽古をきちんとするようになったのだ。
「名前ちゃーん」
「くっつくな狐焼くぞ」
「恐ぁ」
そしてこいつに対する意識も少し。前はうざ、しか思わなかったスキンシップ(セクハラ?)に多少なりともどきっとしてしまう今のあたしが情けない。訳のわからない高鳴りは少しずつ成長していき、思い出すのはやはりあの人のこと。隊長と重ねることはすごい失礼なんだと思うがやはり心のどこかで重ねているのだと思う。
「えっと、それってつまり?」
「……相談する相手間違えた」
あたしが一人稽古していることを聞いたらしく一緒に稽古しようと煩い清音に仕方なく付き合い、今思えばこいつの姉にすべき相談をうっかりこいつにしてしまった。ちくしょーあたし馬鹿、
「待って待って整理するから! えーと、男の人に抱きしめられて他の男の人のことを思い出してしまったと」
「うん」
「それでドキドキした場合、それはどっちに対してのドキドキなんだろうってことでしょ?」
「うん」
「うーん」
珍しく真面目な顔で悩みはじめた清音に少し驚く。なんだかんだでしっかり話を聞いてくれていたらしい。
「あたしそういうのってよくわかんないけど、」
「ん」
「やっぱり思い出しちゃうってことは好きなんじゃないかな」
「じゃあ」
「そっちにドキドキしてるんじゃない?」
「だ、よね!そうだよね!」
事実今狐のことを思い浮かべてもドキドキしないわけで。うん、よかった!
「で?」
「は?」
「名前ちゃんはだーれーに、抱きしめられたのかなー?」
にやにやとよってくる清音に軽い破道を放って逃げる。
「酷!」
「はいはいありがと、じゃあねー」
変化 ?
とりあえずサボり魔な馬鹿狐を探しに行こう。