なんでだろう、
あたしはそれはもう地味に地味に生きてきたつもりだった。席官なんてめんどくさそうだし十二番隊の平としてだらだら任務したりたまに阿近の研究邪魔したりサボったりサボったりサボったりしてるのが性にあってたし好きだったから昇進したいなんて思ってなかった。他の隊の人からは隊士A、いやいやそんなのAに失礼だDくらいだろ、うん。他の隊の人からは隊士Dくらいにしか思われてないんだろうなと思ってた。
なのになんでだろう、
なんであたし
他隊の隊長様に話し掛けられてんだろ。
「きみ十二番隊の名前ちゃんやんな」
・・・誰だっけこの人。隊長羽織羽織ってるから隊長なんだろうけど、やばい忘れちゃった。羽織には三の文字。三番隊?・・・ますますわからん。てかなんで隊士Dのあたしの名前知ってんの、なんかしたかあたし、なんかしたのかぁぁぁ!
「すいません」
「ん?」
「え、あたしなんかしたんですよね。ごめんなさい、全く覚えてないんですが」
ほんとに思い出せない、なんだ。三番隊隊舎の屋根でサボってたことがばれたのか、いやいや平の一人くらいがサボってたってたいして支障ないはず。ましてや局長にお仕置きという名の実験されそうになるならまだしも他隊だ、あたしを怒る権利はないはず!
「ぶっ」
「あ?」
「きみ思たとおりや、おもろ」
百面相しとったで、と爆笑する三番隊長。
え、まじなんなのこの人。馬鹿にしてんのか狐みたいな顔しやがって。
「なぁ、」
じっと顔を見てくる狐。何よ、なんか文句あんのかコノヤロー。だいたいあたしにはこんな狐と戯れてる暇ないん
「三番隊にけぇへん?」
「・・・は?」
「うんうん、決まり。ほな行くでー」
「え、ちょ、いぃやぁぁぁぁあ!!」
がしっという効果音とともに抱えられ、狐は瞬歩で三番隊に向かうようだ。
あの、誰か教えてください。
なんであたし狐に誘拐されてんの!?
「離せこの狐!」
「隊長にそういうこと言うてええんかなぁ」
「あんたが隊長なんて認めんぞあたしは!!」
「へぇ・・・僕名前ちゃんのこと気に入ってもぉたわ。三席にしたる!」
「は!?無理に決まってんでしょそんなん!だいたいそんな簡単に異動できるわけ」
「もう承認済みや」
「え」
「きみんとこの局長さんも『あぁ、あんなサボり魔連れて行ってくれたまえヨ、まぁ実験のときは返してもらうがネ』言っとったで。ちゅーことでよろしゅう、三番隊三席さんっ」
「う、嘘だぁぁ!」
あたしの地味で素晴らしい生活がガラガラと音を立てて崩れ落ちていったのだった。
「助けて!」