「やぁ、名前くん」
「あー…と、どうも、藍染さん」
何となく、苦手である。
五番隊隊長である藍染に話し掛けられることは珍しくない。擦れ違えば必ず話し掛けられるし、遠くで名前を呼ばれれば見かけたから呼んだだけだと言われる。
しかし先程言ったように、正直なところ私は藍染が苦手なのだ。
最初は腹黒変態としか思っていなかったがある時気付いてしまった。
キミノコトはナンデモ知っている。そんな目に。
それからあまり藍染の目は真っ直ぐ見れない。
なんというか、恐い。鳥肌が立つような、そんな感じ。
「えと、なんですか」
「そんなに構えなくてもいいじゃないか。ただ聞きたいことがあるだけだよ」
よかった、今日はなんだか恐くない。普通に笑顔だ。ただそんな笑顔も嘘臭く見えてしまう。
「君は市丸のこと、どう思っているんだい?」
「……は?」
突拍子もない質問に間抜けな声を発してしまった。いやでも仕様が無いでしょ、だって
「いや、市丸がよく名前くんのことを話しているから」
「そうなんですか?」
「あぁ、だから何かあるのかと思ってね」
「何もないです」
何かってなんだ何かって。甘ーい展開がお望みですか藍染さん。ごめんなさいないです。
「あるとしたら苛立ちです」
「ははは、まぁそう言わずに構ってやってくれよ。そうすればサボらないと思うから」
そう笑って藍染さんは去って行った。恐いときと恐くないときのこの差はなんなんだろうと思う。が、気にしないことにしよう。
「名前ちゃん」
「げ、市丸」
三番隊に戻る途中で話題の市丸と遭遇した。うわぁ、と思いつつも手首をがっちり掴む。
「げ、って酷いわぁ。あとなんなんこの手」
「どうせサボりでしょ。連行します」
「えー、まぁ名前ちゃんに連行されるんやったらええわ」
「言い方が気持ち悪いです」
「酷い!」
この人は相変わらず掴めない人だ。でも最近あたしの中で少しずつ認識が変わってきてるのもまた事実。
「しっかりしてください。市丸がサボったらあたしがサボれないんだから」
「一緒にサボったらええやん」
「……考えときます」
あるとしたら苛立ちと…
「名前ちゃん?」
「……なんでもないです」