「名前っち!!」
「やちるちゃん、こんにちは」
「やほー!!」
三番隊隊舎にて、
いつもどおり不在の馬鹿狐の分の溜まった書類を片付けていると窓からやちるちゃんが入ってきた。
ちくしょーかわいいな!
「どうしたの? やちるちゃんが三番隊くるなんて珍しいね」
「うん、ちょーっと名前っちについて来てほしいとこがあってねー」
「あーごめん、今すごい忙しいときだから落ち着いてからでもいい? あとちょっとだと思うから」
かわいいやちるちゃんの頼みだしすぐについて行ってあげたいがしかしさっきから副隊長の視線が痛い。なにもかも狐が原因だろこれ!
「もー名前っち! わかってないなぁ」
「へ?」
「あれは狐に迷惑かけられるのが嬉しいドMなんだから楽しみを奪っちゃダメだよ!!」
…… な ん と ?
今このこかわいい顔して恐ろしいこと言わなかった?
あれ? 副隊長固まってない?
あれ? あれ?あれー?
「さ! 名前っち行くよ!」
「え、ちょっ」
この小さな体のどこにそんな力があるのかというような力でぐいぐいと引っ張られる。
隊舎を出るときに見た副隊長はまだ固まってました。なんていうか…ご愁傷様です。
で、気付いたらなんかあのどこですかここ。
「あのーやちるちゃん?」
「なぁにー?」
「どこに向かってるの?」
「あのねー…ももちん!」
「え、は? ももちん?」
ももちんてどこ!?と目を点にするあたしにやちるちゃんはほら!ももちん発見!と指を指して教えてくれた(あぁ場所じゃないのね)
「もーもちーん!」
「あ! やちるちゃん! …と」
「えーっと三番隊三席の名前です」
「あたし五番隊副隊長の雛森桃! タメ口でいいからね!」
「うん、よろしく」
うーむなんてかわいい子なんだ。十三隊の女の子はみんな可愛いか綺麗かだと思う。
………なんであたしだけこんな感じに仕上がっちゃったんだ?
「あ! あたし達いくところがあったんだ! ももちんじゃあね!」
「ばいばい、やちるちゃん名前ちゃん」
桃ちゃんに手を振って(ここ最近知り合いが一気に増えた。よく名前覚えてられるなぁって自分で思う)あたしの手を引くやちるちゃん。え、なになになに結局どこ行くの?
「とうちゃーく!!」
あの…
なんですかこのでっかい家は、
「びゃっくんの家だよ!」
「へー…誰?」
「びゃっくんだよ! 名前ちん紹介してあげようと思って!」
「わーありがと…びゃっくんて誰?」
あたしの質問もガン無視して勝手に敷地内に入るやちるちゃん。いいのか…?
「あ! びゃっくーん!」
ダッ バッ バン
という効果音とともに、誰か(びゃっくん?)に飛びついたやちるちゃん。あーかわいそうに。
しばらく固まっていたびゃっくんだったがどこからともなく袋を取り出して窓の外へ中身のこんぺい糖をばらまいた。
え、なにしてんのあのひ「わぁーい!!」
バンッ
………………
えぇぇ!!!
やちるちゃんはこんぺい糖を追いかけて窓の外へ。その瞬間びゃっくんは窓を閉めてやちるちゃんさようならーっておい!馬鹿!あたしはどうなる!
「…誰だ貴様」
ですよねーそうなっちゃいますよねー、
うん、久々にめんどくさい予感!
「三番隊三席の名前です」
「何故ここにいるのだ」
「えーとやちるちゃんについて来ました」
「…そうか」
びゃっくんに手を引かれ玄関まで連れて来られた。頭に手をのせられ袋を渡される。
「あのー」
「たまにはあいつの世話など十一番隊に任せて休むといい」
「…」
いや、あのあたし別にやちるちゃんの世話係じゃないし疲れてもいない(はずな)んだけど…
袋の中身は言わずもがなこんぺい糖でした。
びゃっくんにどんな認識されたの、あたし。