「うー…」
頭の痛みで目がさめた。異常な程の頭痛と吐き気、目の前がぐるぐるまわってわけがわからない。
なんでこんなことになってんだ?今はいつなんだ?
と色々思ったところで嗅覚が覚醒しはじめた。
「…くっさ」
締め切られた部屋に充満した酒の臭い。臭いのキツさと頭痛、吐き気から相当呑んだであろうことは想像がついた。
……というかだんだん昨日のことを思い出してきたぞ。
たしか最初は居酒屋で一人でちびちび呑んでて、途中から隣に座った綺麗なお姉さんと一緒に呑んで意気投合して居酒屋を…何軒梯子したんだ?
「はぁー…怠い」
昨日の暴挙を呪ったところで今日が休みになるわけでもないので支度をして三番隊に向かう。
「なぁ、イズル」
「何ですか」
「どないしてん名前ちゃん」
「…二日酔いだそうです」
昼になってようやく姿を現した市丸の変な視線と副隊長の仕事しろよ的視線が痛い。
わかってます、しないならいないほうがマシってこともわかってますごめんなさい。
「はぁ…名前ちゃん、書類はもういいからこれ、十番隊に持ってってくれる? それ終わったら薬飲んで寝な」
「うぅ、すいません副隊長」
ここは副隊長に甘えることにする。なんていうか邪魔するのも嫌だし、
「……」
十番隊ってどこだ。
三番隊を出てきたはいいが十番隊の場所がわからないことに気付いた。どうしよう。
「くさっ」
「あ、修兵くん」
お前なぁ、一応副隊長はつけろ。と頭を小突いてくる修兵くん。響くんでやめて下さい。
「どうしたんだよ、九番隊に用か?」
「ん?」
気付いたら九番隊の前まで来ていたようだ。だからといって用があるのは十番隊なのだが、
あ、
「修兵くん」
「ん?」
「十番隊つれてって」
「ほい」
「ありがとー」
修兵くんは意外と優しく十番隊まで連れてきてくれた。わーなんかいい人ー、
「お前顔色わりぃから早く薬飲んで寝ろよ」
「なに、修兵くん今日優しいどうしたの」
「ばーか、いつもだろ」
修兵くんは頭をぐしゃっとすると自分の隊舎にもどっていった。くそ、イケメンめ。
「失礼します。三番隊第三席名前です。書類を持ってきました」
「入れ」
聞こえた少し幼い声に扉を開けて入る。
「…」
部屋に漂う酒の臭いに自然眉をひそめる。
「悪いな、この馬鹿のせいだ」
「馬鹿って誰のことですか?」
「お前だろーが松本!」
あたしから漂う酒の臭いも紛れてしまうほど酒臭い副隊長と思われる女の人を見て驚いた。
「あ、」
「…あら、名前じゃない」
こちらを見た綺麗なお姉さんは間違いなく昨日一緒に呑んだお姉さんで、
ってなんで名前!
「なんでって昨日のこと忘れたわけじゃないでしょ? あ、でも自己紹介したときあんたベロベロだったもんね、記憶なくて当然か」
すいません記憶ないですというより覚えてるあなたどんだけ酒強いんですか!
「じゃあ改めて…松本乱菊。タメ口でいいからね、あと松本副隊長は堅苦しいからなしよ」
「じゃあ乱菊さんで…」
「どーしたのよ昨日はもっと軽い感じだったのにー。あ、こちら十番隊日番谷冬獅郎隊長」
びっくりして乱菊さんしか目に入ってなかったけど乱菊さんの横でむっすりしてた青年、いや、少年?
え、隊長? え、え、
「かわいい…!」
「は!?」
「かわいいかわいいかわいい何この子かわいいかわいい」
「…てめぇ」
かわいいと言われるのが嫌だったらしい日番谷くん。眉をひそめて睨んでくるくそかわいい、
「あ、あの、頭撫でていいですか」
「ダメに決まってんだろ」
ちくしょーケチめ。
でもおかげで頭の痛さぶっ飛んだからいい。
「日番谷くんこれ三番隊からの書類、じゃああたし戻らないといけないからじゃあね日番谷くん。乱菊さんまた呑みましょうね!」
日番谷くんの怒鳴り声と乱菊さんのばいばーいという声を背に自室へ向かう。
よーし、録りためてた特撮見るぞ!
「なんだあいつ…」
「ふっ、隊長が押されるなんて珍しい」
「押されてねぇよ」
「面白いですねー名前」