なんでかわからないけど泣きたくなって泣こうとしてみるけど泣けなくてそんな状況にまた泣きたくなって、原因がわかればもっと泣きたくなった。
「名前ちゃん?大丈夫?辛そうな顔してる」
「大丈夫、ありがとう」
織姫のことが大好きだった。すごくいい子で友達の些細な変化にもすぐに気付ける、感性の豊かな子だった。優しくて可愛くて、こんな子になりたいと思った。
「井上、悪ぃちょっといいか?」
一護のことが大好きだった。昔から仲が良くていつも一緒にいた。私が悲しいときには笑わせてくれて嬉しいときには一緒によろこんでくれた。いつからか友達としてでわなく一人の男の子として好きになっていた。
一護のことが大好きだったの。
いつからかな?
私の変化に気付いてくれなくなったのは、
いつからかな?
壁を感じるようになったのは、
いつからかな?
私の知らない一護を、織姫なら知ってるんじゃないかと思うようになったのは、
「あのね、名前ちゃん。黒崎くんが…」
織姫みたいな優しい子になりたいとおもっていた。だけどいつからか織姫になりたいとおもっていた。
織姫のことを嫌いになってしまいそうで怖かった。
こんな汚い自分は大嫌いだったしこれ以上汚くなりたくなかった。
壁が厚くなる度にあたしが汚くなっていくということをあたしは知っていた。
「あのよ、名前俺お前に言いたいことが」
「……竜貴ー今日一緒に」
「っ、聞けよ!!」
これ以上壁をつくられる前に、あたしが壁をつくろう。そうすれば織姫のことを嫌いになることもあたしが汚くなることもないんだから。
「……離して、黒崎くん」
一護のことが大好きだったの。
だったんだよ、黒崎くん。
過去形にしたい