「リア充とか爆発したらええねん」
「あ?」
急に毒づいた名前は窓の外ではらはら落ちる雪をじとりと睨みつけていた。
その鋭い目にぞくりと震える。
「なんやねん急に」
「やってホワイトバレンタインデーとか世のカップル達を浮つかせるだけやん。彼氏いないあたしへの当てつけかっちゅーねん」
白石くんはいいかもしれんけど、
と彼女は俺の鞄におさまり切らない可愛らく包装されたチョコを見遣った。
「バレンタイン滅びろ」
「まー……それは俺も思うわ」
「なんで」
「やってこないな量のチョコくわれへんもん」
「でも結局全部白石が食べるんやろ」
「まぁなぁ」
やないとくれた子に申し訳ないし、俺が全部食べるんは礼儀やろ。
「……バレンタインと共に白石滅びろ」
「なんでやねん」
だいたいバレンタインてバレンタインさんが亡くなった日やろなに祝っとんねん。
小さな声でやんやん言う名前。とにかくこのバレンタインデーにあやかっていちゃつくカップル達がうっとおしいらしかった。
「ええやんあやかっても。もはや文化と化しとるし」
「……」
「ほれ」
「は、」
ぽん、と名前の頭にコンビニで買ったチョコを置く。やっぱ買っといて良かったわんーエクスタ「なん、これ」
……邪魔すんなや
「素直になれない名前ちゃんのために逆チョコや」
「古」
「嬉しいくせに」
「……」
「はは、顔赤」
「うっさい」
顔を赤くした名前の髪をくしゃりと撫でて耳元に唇を寄せる。
「なぁ、」
「な、によ」
俺がチョコやるんはお前だけなんやから、味わって食べや。
Saint Valentine's Day!!
(板チョコとか安)
(しゃあないから後で"俺"やるわ)
(……バレンタイン最高じゃねえの!!)