「檜佐木先輩!」





ばたばたと騒がしく副官室に入ってきた、九番隊三席の名前。少しドジだが気も利くし可愛い彼女は九番隊の自慢だ。
霊術院時代後輩であった彼女は俺のことを檜佐木先輩、と呼ぶ。彼女に好意を寄せている俺としてはむしろ名前で、いやむしろダーリ……まぁとにかく副隊長と呼ばれるより距離が近いような気がするから先輩呼びは気に入っている。つまり俺は彼女が大好きだということが言いたかったのだ。





「おーどうかしたか」





先輩ぶって対応していても、脳内ではその柔らかそうな頬に触れたいだとかふわふわとしたはちみつ色の髪を掬いたいとかつやつやと男を誘う小振りな唇に俺のそれを重ねてみたいとか、そんな妄想でいっぱいなのだ。

……本音を言ってしまえば脱がせたいとかあんなことやこんなことを、





「先輩……」

「ん? あぁわりぃ」

「もー! どうしたんですか、最近よくぼーっとしてますよ?」

「あー……」





いっそ好きだと囁いてその小さな体を抱き寄せされたらどんなに幸せだろうか。先輩?と傾けた顔に上目遣い。無意識であっても俺以外にこんなことしてほしくないしできれば俺の目の届くところにいてほしい。





「名前、」

「はい?」

「俺ー……」

「? やっぱり先輩変ですよー」





どんなに脳内で、心の中で彼女を思っても、鈍感な彼女に俺の気持ちは届かないのだ。





「……なんでもねぇよ」






言葉にする勇気がない俺の気持ちが彼女に届く日はいつかくるのだろうか。








鈍感な彼







(あーもーこんだけ告白待ってんのに、鈍いなぁ先輩)
(いっそあたしから、言ってしまおうか、)


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