紅花の咲く景色 | ナノ
温和な冷酷非情


数日後。新聞に、赤也と立海の名が大きめに三面記事に載った。
内容は、不審者を中学生がテニスボールで捕まえた、と言うものだ。つらつらと立海の紹介が書かれ、中学全校集会では赤也を表彰する事になった。
3年レギュラーの頭痛や胃痛は、じきに快方へ向かうだろう。

「知らぬが仏ってこの事だな。ナックルサーブ何回使ってた?」

「見ていただけでは16回ですね。母が術後の仮眠で寝ていて、本当に良かったです。」

「うん、確かにそれは良かった。感動的。万年筆以上はもうイヤだから。大魔王強すぎだし。」

丸井の中で、満は魔王。満の母は大魔王呼ばわりされている。どちらにせよ、影響を受けすぎだ。

「赤也の証言は赤城が考えたな。赤也はバカ正直だからこんな上等な事は言えない。」

「柳先輩ひでぇ!俺頑張ったのに!」

「実際そうじゃない。すぐ赤目になってボコボコにしたもの。」

哀れにすら思える、青学元マネージャーの末路。夕方に、壁打ちに出た赤也と出くわしたのが運の尽き。満も数えていたから、なかなか酷い。

「後顧の憂いを断てた事を喜ぶべきだな。これで心置きなく、青学のたわけた連中を叩き潰せよう。」

「そうですね。薬も使わずになりそうですし、青学は今頃自業自得でしょう。蒔いた種は刈り取って頂かなくては。」

「そうじゃな。柳生の十円ハゲ真似るんは嫌じゃったし。」

仁王が神妙な顔で頷いたが柳生は慌てたように訂正した。名誉に関わる。

「円形脱毛症は出来ていません!」

「俺達もテニス界だけじゃなくてニュースにまでなったし、負けられないね。常勝立海大、って書いてあったみたいだし。」

「幸村先輩、当たり前ッスよ!満が言ってくれたンスから!」

「やっぱり赤城が考えたのか。」

ジャッカルが鋭くツッコミを入れた。赤也の自爆でしかない。

「学年首席と英語の赤点エースじゃき。」

「と言うか、これで氷帝に先越されたら恥ずかしい以外ねぇって。」

丸井の言葉に頷く一同。満の存在は、善でも悪でも無いが立海男子テニス部にとってなくてはならない。

「まぁ、驚いたのはあの人がマネージャーをクビになってその事を皆さんが隠していた事ですが。次の手当てを、楽しみにしていますよ?」

やっぱりバレた!と正直な丸井が、顔に出してしまった。
今日も立海大附属中学校男子テニス部は、賑やかで平和と言えば平和だ。

「だって教えたら赤城喜んで切りに行きそうだろうが!」

「人を節操なしにしないで下さい仁王先輩じゃないんですから!」

「どぉいて俺が出るんじゃ!?」

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