紅花の咲く景色 | ナノ
知勇兼備が厄介


柳も満も示唆した事なのだが、嫌がらせが悪化した。郵便受けに生ゴミを入れられるのだ。
柳生とジャッカルは、食欲不振になるまで胃の調子が悪化。若くして心因性の、十円ハゲの危機に瀕していた。満は困ったとしか言わないのだが。

「嫌がらせ悪化は想定していたんですが、連日生臭い郵便受けに母が殺りに行きそうなんですよね。この手の事となると、気が短いので大変です。」

ラスボスが動きそう!?と緊張が走る3年レギュラー達。
元マネージャーの命に関わる事だ。見過ごせる程悪人にはなれない。かと言って庇う気は更々無い。保身に走る彼らを、責める事は難しい。

「犯人捕まるまで、満んち泊まって見張りやろうか?母ちゃん達なら、事情説明したら即行けって言うし。もしかしたら俺が役立つかも知んねえから。」

実情を知ると恐ろしい事鬼の如し、とも言える赤城親子は大人しく眠らせていれば、朗らかで人付き合いもいいと評判だ。だから油断されるし、油断を誘う。

「それはえぇじゃろ。赤城んちから学校は通えばよかち。」

「緊急事態でもあるし。」

「いざとなれば弦一郎を呼ぶ最終手段もある。」

「うむ、こればかりは致し方あるまい。」

幾ら強くてもやり方に問題がありすぎる、と満が言う母なのだ。ラスボスと言われてもおかしくはない。
妙に勧められる事に、些か疑問を抱きながらも満は頷いた。
赤也と満が同時にキレると選手生命が終わるが、親子だと命が終わるか人生の底辺かしか無い。どちらにせよ、物騒極まりないのだ。

「じゃあ赤也、いつから家に来るの?」

「今日!晩飯よろしく。」

善は急げ、とばかりに断言した赤也。内心、3年レギュラーは焦りがちな後輩の行動力に、珍しく有り難みを感じていた。
何かあってからでは色々と負担になるバカップルなのだ。

「じゃあ牛乳買って帰らなきゃね。家はあんまり飲まないから。」

「満の母ちゃんカフェオレカパカパ飲むだろ。」

「病院と自宅の冷蔵庫別になってるわよ。入院はさせないけど、一晩様子を見なきゃいけない事もあるんだから。」

ちなみに、満はストレートティーをよく飲む。茶葉も拘る、庶民の敵に近い。

「チャンネル争奪戦、起こさないでくれよ?」

「赤也が宿題終わったら譲ってるじゃない。」

体術、技術の向上とテレビを巡る親子の戦いは、筆舌に尽くしがたい。いきなり包丁片手で攻防戦となる、非常識なチャンネル争奪戦だ。もう少し平和に争奪戦してくれ、と赤也は言いたい。

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