紅花の咲く景色 | ナノ
隠し通せ!


3年レギュラーの裏事情を知らない、バカップルは今日も今日とていちゃついていたのだが。満の何気ない一言が、凄まじいダメージを与えた。

「昨日も今日も下品な手紙が送られてくるなんて…私何したのかな。」

「え!?赤城さん嫌がらせされてるの?」

咽せた柳生とジャッカルを無視して、幸村が話を聞こうとする。柳と仁王はポーカーフェイスを保っているが、箸が止まった。丸井と赤也はパンを食べる口を止めた。無事なのは真田だけだ。
内心、自己暗示に忙しい。

「えぇ。定規で書かれた手紙が毎日。4日程続いていますし、何かしなくてはいけないかと。学校でしたら調べられるのですが、自宅ですから。」

警察はストーカーや嫌がらせに割ける人員が居ない。幾ら居ても足りないぐらいに、よくある話になっていたのだ。
赤城家は物理攻撃力の高い親子だ。それも手伝って楽観視されている。
登下校はともかく、自宅に直接嫌がらせは幸村達も手が出せない。

「宛名とかあるの?」

「立海のマネージャー、と書かれています。悪化するとこの手の人はエスカレートして、タチの悪い事をしますから厄介なんです。時間帯もランダムで、1人なのかすら解らないので困ります。」

多分1人だよ、とは口が裂けても言えない。青学に完全武装で乗り込みそうなのだから。情けをかけない、と宣言した以上怖い。
動体視力に自信のある立海レギュラーさえ、目に見えないナイフ捌きは披露して貰いたくない。

「立海のマネージャー、か…いつも救護要員って紹介してるのにね。」

「はい。立海付近の他校生が嫌がらせをするには理由が不可解ですし、赤也より幸村先輩や、仁王先輩にキャーキャー言ってますからね。移動中赤也は私にべったりしますから。」

事実ではある。満はそれ程印象的な見た目ではない。落差が激しいから、切る時の顔が忘れられない。
頭が切れるだけに、諸刃の刃でもある。下手に探るとこちらの思惑が露見しかねないのだ。

「それは…やはり警察に言うだけ言ってみては?」

「厳しいと思います。私が有名なのは、変質者にまつわる事件ですから、被害者であり加害者です。ですが今回の宛名は立海のマネージャー、よってテニス部関係者に近いか、関係者に絞られます。」

ストーカーも、スカートを切った男も、無関係に等しいのだ。ましてや満がマネージャーだ、と勘違いする必要がある。
幸村は説明を聞きながら、嫌な汗が止まらないレギュラーに、しらを切り通せと合図していた。

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