紅花の咲く景色 | ナノ
手綱の引き方
満の何気ない一言が、きっかけではあった。周りはいい迷惑を現在被っている。赤目になった赤也がナックルサーブを連発しているのだ。
「今日はやたらと怪我人が多いですね。はい、丸井先輩終わりましたよ。」
「赤城が言い出しっぺって仁王が言ってたぞ。んで怪我人見て嬉しそうにすんの怖いから。」
恨めしげに丸井から見られても、身に覚えが無い。何らかの、お願いをした記憶は全く無い。
「あ、解った。最近他人の怪我と赤目を見てないなぁって、つい言っちゃったんですよ。結果論では怪我人続出で、私は楽しいですけど。」
器具を片付けながら、納得したように勝手に自己完結している満。
立海テニス部員は全員味見を終了しているので、見るだけだ。
「赤城ー!柳生がナックルサーブ当たって怪我したぜよ!」
「運ぶのは物理的に無理なので連れて来て下さい!私に柳生先輩は運べませんから!」
「リストバンド外してもか?…あ、柳生でかいな。ゴメン。んじゃ!」
丸井の次は柳生、と忙しいが楽しんでいる。赤也は夢中でサーブ練習だ。
「いっ!」
サーブが当たり、思い切り肘を擦りむいた柳生。
抉るような消毒に、涙目になってしまった。
「あ、すいません柳生先輩雑菌が多いようですね。涙目ですが、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫に見えますか?」
声が震えて、真面目に痛そうにしている。満の手当ては早いし上手いが痛い。と言われるのだ。
悪気は全く無いのだが、練習相手が麻酔を打たれた急患ばかりだった。
「出血は止まっていますから、浅いですよ。と言うか…言って良いんでしょうかね。色が仁王先輩にしか見えないのですが。」
柳生改め仁王は眼鏡を直しながら、小さく溜め息を吐いた。
「おんしゃお手軽血液検査みたいじゃち。身近な物で傷害事件も、起こせそうやし。」
「何もされなきゃ何もしませんよ。ガーゼを付けていいですか?」
「おぅ。すまんな。」
てきぱきと手当てをして、次に運ばれて来る部員の手当てを繰り返す。
「赤城さん、赤也止められるかな?」
「さて。試した事はありませんが、真田先輩を一応保険にお借りして宜しいですか?」
「いいよ。長続きされると消毒液無くなるし。」
真田に拒否権が無い、立海男子テニス部二大権力者の命令。
落ち着かない赤也を問答無用で気絶させた満だった。
「痣になっていたらすいません。フォローはしますから。」
「あんなの赤城にしか出来ないから安心してくれ。赤也一撃で沈めるとかすげーって。」
大した時間はかからず、赤也は復活していた。
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