紅花の咲く景色 | ナノ
楽しいから遊ぶ


山へ行こう、となったバカップル。だが、満は意外と身軽な装備だった。
持って来た方がいい、と言っていた虫除けスプレーやかゆみ止めなどは当然。泊まる訳でもないのだ。

「はい、この山が毎年一週間サバイバル体験会場になってた山。一応ルールとかあるよ。10才まではチームを作ったり、縄張り決めたりしてた。懐かしいなぁ…。夏休みにやってたんだよ。冬休み泣けそうだけど命かかるから。監視の先生が見回りするし。」

雪が積もらなくても、一週間サバイバルは幼い子供には過酷。同時に仲間意識とライバル意識を育む。

「川はあるし、たまにトラップあるから気をつけてね?悪戯だから痛いぐらいだけど。」

「満。あっさり言ってるけどヤバくないか?」

ジト目で満を見てしまう赤也。危険が多い気がしてならないのだ。野草の知識や花に詳しい理由はここにも多少ある。

「ヤバくないよ。この山名義お母さんだから法律も大丈夫。お爺ちゃんが山菜採り好きで買ったんだって。物好きだよね。」

事実なのだが、金持ちの医者は金銭感覚が微妙にずれている。
赤也は上手く行けば、逆玉だ。満は土地持ちの医者の一人娘。加えて医者になる可能性がある。趣味と特技さえ気にしなければ、問題はないのだ。

「崖とかあんだけど。登るとか無いよな?マンガじゃねぇんだし。」

「無いよ。そんな事されたら責任問題に発展するからやらせてくれないし。変な薬草が生えてるとかそういうのも無いから。」

「…満、最近そういうの詳しくなったな。」

赤也の付き合いで、マンガを読ませられているからなのだが。

「ゲーム好きの誰かさんと話を合わせる努力よ。友達にそういうの好きな人がいてメールしてるの。受験生のクセにゲームとかアニメとかにうつつを抜かして危ないんだけどね。」

「例の孤児院出身か?」

「違うわよ。警官のお子さん。さ、川行こう。」

母のコネクション経由。極端に広くはないが、成績優秀で大人からの評価は高いのだ。
歩き出した満の足腰は丈夫になっていた。

「そこ落とし穴。」

「よく解るな。」

「私が作った奴だからね。まだ残ってたんだ。」

「ホント謎だらけだな。うぉわっ!?」

蔓に足を引っかけ、転びそうになる赤也。よそ見は厳禁の山だ。

「気をつけてねー滝壺もうすぐだから。」

「…修行出来そう。なんか色々必殺技覚えるとかやれそう。」

「無いってば。でも水は冷たいから気持ちいいよ。滝壺に飛び込むとかやってる人もいたし。」

アウトドアかつ、野趣溢れた体験を存分に楽しむ2人だった。

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