紅花の咲く景色 | ナノ
顔も知らない有名人


山吹中にて、部室で着替える亜久津の体に無数の切り傷がある事で部員は騒ぎ立てた。
空手でも無敗だったと言われ、天性のセンスに恵まれた亜久津を傷だらけにしたのは誰だ?と話が進んでいく。

「あ、亜久津先輩!その怪我どうしたですか?」

「皮一枚切られただけだ。思いっ切り遊びやがってあのクソアマ…!」

思い出すだけで亜久津は腹が立つ上に、満には一度も勝っていない。
部活ではランニングに励み家では母とチャンネル争奪戦を兼ねた、手合わせを繰り返す満なのだ。努力と言うよりは遊びも兼ねて行っている。
手の抜き方から確実に仕留めるまで、徹底的にやれる内はやらされているのだ。多少独学もある。

「女の子…?なわけ無いよね亜久津より強い女の子なんていないって。」

「ドタマかち割んぞ。立海だとか聞いたけどな。」

笑いながら手を振る千石に亜久津の無情な一言。亜久津以外は全員、自分の耳を疑った。

「は?立海?王者立海!?いやいやあそこは大学あるし、年上のお姉さんを守る人達にやられたんだよね?そうだと言って。」

「でも皮一枚切られただけって言ってたよね?」

「思いっ切り遊びやがってとも言ってたね。」

千石がブンブンと手を振る中、新渡米と喜多が不思議そうにしている。満を知らないのだから、知る術も無い。

「立海って言うと女の子で有名なのは二年生の赤城満さん、だったかな。去年の秋にストーカーを万年筆で撃退して万年筆まだ売れてるよな。」

「クソアマの名前なんざ二度と聞きたくねえ。」

眉間のシワが深くなる亜久津だか、白状している。南に悪気は無い。

「…だとしてもタダじゃ済まないだろうな、その子。阿久津にケンカ売るなんてムチャだ。」

無傷で勝ち逃げを続けている、など考えにくい。亜久津は努力を嫌うから、敗北を屈辱とするのだ。
東方も事情を知らなければごもっともな意見。

「チャットで聞いた事ありますね。立海は成績優秀なのに変態がいるって。噂ですけど。」

「ハッ、変態か。血を見て笑うクソアマは言われて当たり前だ。」

室町の言う意味と、千石が思いついたのと、壇が想像したものはそれぞれ思春期の健全な男の子らしいものだった。亜久津によって粉砕されているが。亜久津も満を、変態呼ばわりしているのもある。

「…どんな人なんですかその人。」

「まぁ、神奈川だし。立海だし?会わないから大丈夫!俺のラッキーを信じてね!」

「今は千石のラッキーに頼るしか無さそうだな。」

手を出さなければ怖くないのだが、簡単には信じられない。

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