紅花の咲く景色 | ナノ
知らず知らずに


バカップルは、よく遊ぶ。満が、日が暮れても夢中になって遊んでいた事をやってみたい、と赤也に言われ風船に小石を当てる遊びを教えていた。

「基本は100メートル当ててまぁいいかな?って感じだよ。」

「…メチャクチャ遠いんだけど、いつやってた?」

どういう教育だ、と言いたくもなる。しかしこれが遊びだったのだ。腕が上がるのも当たり前。

「初めて当てたのは3年生ぐらいかな。最高記録は150メートル。それ以上は場所が無くて。お婆ちゃんちの近くは結構空き地が多かったから、石はたくさんあったし。」

どこからツッコミ入れたらいいんだ、赤城家の教育方針。折り紙でコードを切り山でトラップを作り、川で火熾しから魚を捌く事まで教えられる。

「…初心者向けの距離はどんくらい?」

「最初は20メートル。赤也腕力強いし、ここなら50メートルまで試せるからやる?教えるよ。」

体育では負けたくない、と赤也は豪語しているが、満はこんな事を昔からやっていた。専門でなければ勝てない気もする。
とりあえず挑戦する事にした。

「当たんねー!ラケット使いてぇよ!」

「赤也、ボール投げる感覚みたいだね。アンダースローで投げてみたら?こんな感じ。」

赤也に見えるように、軽くジェスチャーしてみる。筋はいいのだ。

「当たれーっ!」

思い切り赤也が小石を投げると、風船は見事に割れて赤也は笑顔になった。

「当たった!満見た!?」

「上手上手。初めてやったのに当たる人珍しいよ。私1年かけたし、お婆ちゃんは手首だけで投げてたから意地で手だけでやってたからかなぁ。」

満はニコニコしているが、どんな婆ちゃんだ。と赤也は思わずには居られなかった。満にとって、ハイパー婆ちゃん的な存在である。越えるにも無理だ。全盛期を見ていないのだから。

「…ホント満んちの婆ちゃん会ってみたかった。満はどうやんの?」

「普通に料理教えてくれたお婆ちゃんだよ。私はこうするの。」

親指に小石を置いて、空高く弾いた。2人して見上げずにはいられない。

「高いな。測れる?」

「柳先輩辺りやりたがりそうだけどね。今度、夏恒例の山体験してみる?私は未だに好きになれないんだ。虫がいるから。」

「行く!」

カブトムシを採りに行くぐらいの赤也だから、目を輝かせて頷いた。サバイバルな山になるが知らないのだから、仕方ない。

「1日だけになるけど虫除けスプレーとか用意した方がいいよ。すっごいいっぱいいるから。」

冬は泣きたくなるぐらい、過酷な事である。

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