紅花の咲く景色 | ナノ
朱の笑みが消えた


暫くは、平和な日々が続いていた。
乾による調査はあったが柳と仁王、そして満も手回しをして余計な事を言わないように。
流血カップルは、ゲーセンに行きたがる赤也の我が儘を聞いて、ジャッカルと丸井が誘われた。いつも2人だと味気ないから、と満から。

「おっしゃあランキング1位!俺すげぇ!」

「…そんなの自分で言う事かしら?」

「赤也上位当たり前だからな。」

「そうそう。俺も負けるんだよな。天才的なコンボやる前に。」

4人でゲーセンを楽しんでいたのだが、比較的都内から近い土地だったからか青学の桃城と菊丸、そして越前と遭遇した。

「…相変わらずちやほやされてんな。」

「ちやほやされた記憶はありません。何かご用件があるのですか?」

「無意識とかタチわる!ムカつくなーお前。」

「英二先輩、この女赤目の彼女だって話ッスけど怪しいッスよね。」

流血カップルの禁句を言ってのけた越前。ゆっくりと桃城は満に近付き、殴りかかった。
救えない程、相手があまりにも悪すぎる。満はひらりと身をかわし、両手を上げていた。

「暴力反対。赤也は我慢してね?私の流儀で今はやらせて頂戴。」

「満…ヤダ!そいつぶっ潰す!」

「止めろ赤也!ジャッカルは赤城!」

我に返った丸井とジャッカルはそれぞれを押さえる。最悪のパターン一歩手前だった。

「それ、どういう…え!?桃!シャツ!」

桃城のTシャツが、横に切られていた。何の迷いもない切り口。そして肌には傷も無い、死神の所業。

「英二先輩、ヤバいッスよこいつら!」

「バカ!赤城に喧嘩売るからだ!2人キレて止められなかったらお前ら二度とテニス出来ねぇぞ!ジャッカル、とりあえず赤城連れて落ち着かせろ!俺無理だから!」

「丸井先輩、放して欲しいッス。こいつ満を殴ろうとしやがった…!」

「青学のバカも早く行け!赤城が地獄の果てに案内すんぞ!?追い掛け回されてぇのか!赤城も落ち着け頼むから!」

「婦女暴行、及び侮辱に対し、私は反撃させて頂きます。」

必死で軽い満を抱えて逃げるジャッカル。何とか赤也を押さえる丸井に混乱しながらも、3人はゲーセンを後にした。
凍るように冷たい満の、この世ならぬものを見ているような深い目がただ恐ろしかった。冷ややかな声の満と、怒りに燃える赤也は対照的だが目的は一致していた。

「…落ち着いたか?赤城。赤也も。」

「えぇ。危ない所を有難う御座いました。ただ、もう私は彼らに情けをかける事はありません。」

微笑んだ満はいつも通りだったが、起こしてはいけないものを青学メンバーは起こしてしまった。

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