紅花の咲く景色 | ナノ
先達の憂鬱


そして金曜。バカップル不在の中、重苦しい雰囲気の昼食が始まった。

「…ホントどうすんだ。ジロ君からは返事ねぇし。」

「人の口に、戸は立てられん。赤城とあやつらを会わせん事に心血を注ぐべきだろう。」

傍迷惑極まりないバカップルだが、満を引き込んだのは自分達なのだ。青学を叩き潰す為にも彼らを守らなければならない。
普通は逆なのだが、仕方ない。

「キレられたら終わるからな…。何か言っちゃいけない事、赤城にあるか?宍戸にメールしとかねえと危ないだろ。」

「赤也の彼女である事を否定される事だ。一度、女子に言われて危うく万年筆が光るところだった。」

日頃は愛用している万年筆を切る為に使う時、それは満が怒っている事を示す判りやすいもの。
非常に危険でもある。

「…胃薬を買うべきですよね。」

「柳生、ジャッカルはもう使っとるぜよ。」

「情報操作は柳と仁王が頑張るとして。出回ってる事はヘタに隠すのも困るから部員は忙しいフリでスルーしとこうか。まぁ、部活中の話は大した事じゃないけど。」

嫌な予感は当たる。だからこそ何とか被害を最小限にしたい。切実な願いだ。

「後、重要な事は赤城さんに暴力を振るう下劣な輩を切原君が目撃した場合、2人して暴走します。」

「赤也は赤城を守る為、赤城は赤也に怪我をして欲しくないと見事に守りあいながら血の海を作りかねんからな。」

実体験したくない、血の雨を見る羽目になる。頭を抱えたいが解決しないのだ。氷帝は氷帝で唸っている事は、知る由もない。
元はと言えば青学に責任があるのだが、どうしようも無いのだ。満の毒牙に突っ込もうとする彼らを、何としても止めなければ。

「海に行くって言ってたけど、会わないよな。神奈川と都内じゃ距離もあるし他にもあるし。」

「赤城はそこまで目立つ見た目でもないし、赤也は水を被れば髪も目立たないから、万が一鉢合わせしても見つかる確率は5%未満だろう。」

「後はそれ以外のデートだよね。さり気なく聞いて偶然装うとか誰に出来る?誘って貰えればそれに越した事は無いけど。」

ダブルデートの場合、満は確実に遠慮する。気遣いはそれなりに出来るのだ。だからマルスルージュを作り上げながら、動ける者しか使わない。
専制君主ではないのが、今は都合の悪い事になっている。部員も慣れて怖がらない。

「遊びに行く所次第じゃき。喧嘩になりかねん奴らが遥々神奈川来るかも怪しいかのう。」

「最悪のパターンを想定して動くべきだな。マニュアルは作ろう。」

胃痛が悪化しそうな3年レギュラー。

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